◇SH0212◇消費者契約法専門調査会のポイント(第4回) 児島幸良(2015/02/06)

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消費者契約法専門調査会のポイント(第4回)

森・濱田松本法律事務所

弁護士 児 島 幸 良

 平成27年1月30日、内閣府消費者委員会において、第4回消費者契約法専門調査会が開催された。以下、その概要を報告する。なお、本報告において、意見に亘る部分は、全て報告者の私見である。 

  1 配付資料

    以下の資料が配付された。資料はこちらから

    ①資料1  「第3回消費者契約法専門調査会で出された主な御意見の概要」

    ②資料2  「「個別法」との関係(総論)」(沖野眞巳委員提出資料)

    ③資料3  「消費者契約法の見直しについての考え方」(阿部泰久委員提出資料)

  2 議事内容

 (1) まず、資料1に基づいて、第3回の消費者契約法専門調査会で出された意見の概要が紹介された。

 (2) 次に、資料2に基づいて、沖野委員から、消費者契約法と個別法との関係とそのあり方を中心に、説明がなされた。

 (3) さらに、資料3に基づいて、阿部委員から、主として事業者側からの消費者契約法の見直しについての考え方について、説明がなされた。

3 質疑応答及びフリーディスカッション

 (1) 資料2及び3に基づきなされた説明に関する質疑応答及びフリーディスカッションがなされた。

 (2) 質疑応答及びフリーディスカッションでは、次のような意見ややりとりがあった。

○ 一般法と特別法との関係について

・ 一般法と特別法では規律対象にずれがあるが、「一般法の規定で処理できるので特別法の規定は不要」という結論には直ちにはならないし、逆に、「特別法の規定で処理できるので一般法の規定は不要」という結論にも直ちにはならない。この点は、コンセンサスがあると言って良いのではないか。

・ 一般法と特別法の効果の違いも考慮する必要がある。特別法では、刑罰法規や行政法規があることも多い。消費者の被害救済のために、一般法と特別法でどのような組合せがあり得るかという観点から議論するのが望ましいのではないか。

○  消費者契約法4条の「勧誘」要件の削除について

・ 情報提供の対象が不特定多数であれば、そのことのみをもっておよそ「勧誘」ではないというのであれば問題である。広告だから「勧誘」ではないとか逆に広告であれば常に「勧誘」であるということではなく、当該情報提供が実質的にどの程度消費者の意思に働きかけるものであるかを検討するべきと考える。その結果として、広告であっても実質的に消費者の意思に働きかける度合いが大きいのであれば、それはやはり規制の対象とすべきではないか。

・ 阿部報告では、景表法があるから広告を消費者契約法の規制対象とすべきではないかのごとくされているが、広告規制の話をしているわけではなく、当該広告が実質的にどの程度消費者の意思に働きかけるものであるかの問題であると思う。

○  ブラックリストの追加について

・ 阿部報告では、いわゆるブラックリストはガイドラインで定めるべきということだが、ガイドラインを制定する主体は誰で、具体的にどのようなガイドラインになるのかが分からない。業界が都合よく定めるガイドラインでは意味がないのではないか。

・ 法律に定めがある場合にその解釈指針となるのがガイドラインだと思うが、法律に手がかりがないのにどのようにガイドラインを充実させるのか。

・ 阿部報告では、業界ごとの実務を踏まえてブラックリストを定めるべきということだが、どのような業界で使用されてもおよそ無効となるような条項がブラックリストと整理されているものと理解しており、業界ごとの実務を踏まえるようなものではないと思う。

・ 特別法(個別法)にルールを設けるための指針として、消費者契約法にブラックリストを設けることにも意義があるだろう。

・ ブラックリストについて事業者は過度に心配し過ぎではないか。公序良俗といった抽象的で内実が分かりにくい規定よりも、ブラックリストで明確になった方が、取扱いが明確になり、事業者・消費者双方にとって良いのではないか。

○  平均的消費者基準について

・ 消費者契約における条項の明確化・平易化に際しての基準を「平均的消費者」に置くならまだしも、消費者契約法における条項の解釈が全て「平均的消費者」を基準とするのであれば問題がある。

・ 「平均的消費者」が具体的にどのような人であるかは、想定されるサービスの目的や類型によって異なる。たとえば、介護サービスと郵便サービスでは想定される「平均的消費者」は異なることは明らかであろう。

○  債権法改正で導入を見送られた規定について

・ 阿部報告では、債権法改正の議論で反対が強く導入を見送られた規定について、消費者契約法でも導入すべきではないとされているが、債権法改正で導入されなかったのは民法で導入することが不適切だったからで、消費者契約法で取り上げるべきではない論拠にはならないのではないか。

・ 債権法改正では、消費者契約法の観点からどうかという議論はなされていないと記憶しており、債権法改正で導入されなかった=消費者契約法でも導入すべきではない、とはならず、個別に検討が必要と考える。

○  約款規制について

・ 阿部報告では、いわゆる中心的条項は、当事者の合意によって定められるものであるから約款規制の対象とすべきではないとしている。他方、阿部報告では、民法で約款規制が設けられるから消費者契約法で約款規制を設ける必要はないとされているが、民法での約款規制は、約款の変更の論点から明らかなように、中心的条項であるから約款規制の対象とはならないとはしない立場である。その点は矛盾しているのではないか。

○  金融商品販売法について

・ 一般法と特別法(個別法)の関係を考えるにあたっては、一般法たる不法行為法の特別法である金融商品販売法を参考にできると思う。同法は、不法行為法で解決できるから規定を設けないという立場をとっていない。

 

以上

(こじま・ゆきなが)

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