消費者契約法専門調査会のポイント(第5回)
森・濱田松本法律事務所
弁護士 児 島 幸 良
平成27年2月13日、内閣府消費者委員会において、第5回消費者契約法専門調査会が開催された。以下、その概要を報告する。なお、本報告において、意見に亘る部分は、全て報告者の私見である。
1 配付資料
以下の資料が配付された。
①資料1 「第4回消費者契約法専門調査会で出された主な御意見の概要」
②資料2 いずれも大澤彩委員提出資料
(1) 「不当条項規制部分の改正に向けた論点・提案」
(2) 「不当条項リスト案に掲げられた条項・諸外国の不当条項リストで列挙されている条項(2015.2.13)」
(3) 「フランスにおける濫用条項のリストについて-2008年の消費法典改正および2009年のデクレの紹介-」『法学志林』第107巻第2号37頁(法政大学学術機関リポジトリ識別子http://hdl.handle.net/10114/6397)
③資料3 いずれも古閑由佳委員提出資料
(1) 消費者契約法の改正についての意見(総論)
(2) プレゼンテーション資料
(3) 消費者契約法の改正についての意見(各論)
2 議事内容
(1) まず、資料1に基づいて、第4回の消費者契約法専門調査会で出された意見の概要が紹介された。
(2) 次に、資料2に基づいて、大澤委員から、消費者契約法の不当条項規制部分の改正を中心に、説明がなされた。
(3) さらに、資料3に基づいて、古閑委員から、主として事業者側からの消費者契約法の改正に係る意見を中心に、説明がなされた。
3 質疑応答及びフリーディスカッション
(1) 資料2及び3に基づきなされた説明に関する質疑応答及びフリーディスカッションがなされた。
(2) 質疑応答及びフリーディスカッション主要な意見ややりとりの中には例えば次のようなものがあった。
○ 消費者契約法10条の改正について
・ 商品ないし役務の対価も消費者契約法10条に抵触するかどうかの考慮要素となりうるのではないか。
・ 取引慣行も消費者契約法10条に抵触するかどうかの考慮要素となりうるように思う。
・ 不当性の考慮要素を具体的に書込むという考え方に賛成であるが、契約締結過程の事情を考慮に入れるかどうかは難しい問題である。
・ 条項が不明確であるという事情は、消費者契約法10条に抵触するかどうかの判断に当たって考慮されるべきである。
○ ブラックリストの導入について
・ 個別に交渉して合意のあった条項はブラックリストの対象から除外すべきという考え方はとるべきではない。
・ グレーリストが導入されると、事業者にとっては実質的にブラックリストとして作用することになる。
⇒あくまでも不当と推定されるのがグレーリストに過ぎない。「グレー」という呼称にするかは検討の必要があるが、グレーリストがないとそもそも消費者契約法10条に抵触するかどうかだけの問題となり、却って不明確ではないか。
・ 「契約の…対価…に関する条項を変更・決定する権限を事業者のみに与える条項」をブラックリストとしているが、正当な事由があれば変更権限があっても良いのではないか。民法改正の定型約款の変更の議論との関係も整理する必要があるだろう。
○ 古閑報告について
・ 消費者被害の速やかな回復を図るべきであるのに、事業者側の負担増大のみを理由にこれに頭から反対されるのは遺憾である。消費者対応はコストではない。
・ ごく一部の不心得者を如何に排除するかが消費者契約法の目的であるというのは違う。消費者契約法は悪徳事業者規制法ではない。
・法の素養のない人のことを想定すべきとあるが、それならむしろ指針としてブラックリスト・グレーリストを設けた方が一般人にも理解しやすいのではないか。
以上
(こじま・ゆきなが)