◇SH0260◇消費者契約法専門調査会のポイント(第7回) 児島幸良/須藤克己(2015/03/20)

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消費者契約法専門調査会のポイント(第7回)

森・濱田松本法律事務所

弁護士 児 島 幸 良

弁護士 須 藤 克 己

 平成27年3月17日、内閣府消費者委員会において、第7回消費者契約法専門調査会が開催された。以下、その概要を報告する。なお、本報告において、意見に亘る部分は、すべて報告者の私見である。

1.配布資料

以下の資料が配布された。

資料1           今後の審議スケジュール(案)

資料2           個別論点の検討(1)―消費者契約法総則―(消費者庁提出資料)

資料3           山本健司委員提出資料

資料4           河野委員提出資料

資料5           増田委員提出資料

2.議事内容

 (1) まず、資料1に基づいて、今後の審議スケジュール案が示された。

なお、本調査会で示された審議スケジュール案(※ただし、審議日程の追加はあり得るとの留保付)は、概要以下のとおりである。

【審議スケジュール案】

3月17日   総則(1)

4月10日   不当勧誘(1)①

4月24日   不当勧誘(1)②

5月15日   不当条項(1)①

5月29日   不当条項(1)②

6月中旬     総則(2)、不当勧誘(2)

6月下旬     不当勧誘(2)②、不当条項(2)、その他

7月上旬     (6月の審議の補充等)

7月中下旬(8月上旬)取りまとめ

 (2) 次に、消費者庁加納消費者制度課長から、資料2に基づいて、以下の論点ごとに説明がなされ、各論点についての審議が行われた。

  ①「消費者」・「事業者」概念の在り方

  ②情報提供義務

  ③契約条項の平易明確化義務

  ④消費者の努力義務

3.審議

 (1)「消費者」・「事業者」概念の在り方

  • 複数の委員から、「団体が実質的には消費者の集まりである場合」(資料2の7頁(エ))に関し、団体であっても消費者に含めるべき場合があるので手当てをすべきであるという意見が出された。ではどのように「事業者」と「消費者」を切り分けるべきと考えるかとの座長の問いかけに対し、「事業のため」かどうかで切り分けてはどうか等の意見があった。
  • また、「自己の事業に直接関連しない取引」(資料2の7頁(ウ))について、基準が不明確となるのではないかとの懸念が複数述べられた。
  • 消費者、事業者の定義について、日弁連試案の定義よりも現行法のほうが使いやすいのではないかという意見があった。
  •  事業者間の取引に消費者契約法を類推する考えに反対する意見があった。関連して、事業者間の格差と消費者・事業者の格差はパラレルで考えていいのかという意見もあった。

 (2)情報提供義務

  • 情報提供義務を法的義務化することに賛成とする意見が複数聞かれる一方、その要件については、事務局が提示する4要件(①事業者の情報入手可能性、②消費者にとっての情報の重要性、③消費者の情報入手困難性、④事業者に損害賠償させることが不相当でないこと)のうち、②を除く要件は入れるべきではないとの意見(この意見に関連し、②以外の要件については消費者と事業者間の構造的な情報交渉力格差から推定されると考えることを示唆する見解も有り)、逆に要件を絞ることへの危惧感を述べる意見、上記4要件の他に検討すべき要件はないかと述べる意見、不利益事実の告知との関係を整理すべきであるとの意見、消費者にとって理解できる方法・程度で情報提供が行われているかどうかが肝要との意見などが出された。
  • 義務違反の効果は、場合によっては取消しの方が良い場合があるのではないか、損害を個々の事業者が認定するのは実際上難しいのではないかという意見もあった。
  • 情報提供義務については今般の民法改正で議論されたものの最終的には改正されないこととなったことを受け、消費者契約法改正で受け止める必要があるのではないかという問題意識が述べられた。

 (3)契約条項の平易明確化義務

  • 平易明確化の法的義務化及び条項使用者不利の原則の明文化に賛成という意見がある一方、一部の委員から反対意見もあった。(この反対意見とは別に、小規模事業者に混乱が生じないよう、平易明確化についての考えや事例を紹介する等の支援が必要ではないかとの意見も出された。)
  • 複数の委員から、契約条項の平易明確化義務違反の効果がなぜ損害賠償となるのか(取消し等もありえるはずであり、必ずしも論理必然ではないのではないか)という疑問が提示された。
  • 条項使用者不利の原則に関し、同原則とは、“契約条項が不明確な場合、まず合理的な解釈を行い、それでも不明な場合に条項使用者不利に解釈するということではないか”という見解が述べられた。
  • 不当条項規制、約款規制との整合性について検討すべきではないかとの意見もあった。

 (4)消費者の努力義務

  • 複数の委員から消費者の努力義務について削除に賛成という意見が述べられたが、一部委員から削除に反対する声もあった。

 (5)その他

  • 冒頭の審議スケジュール案の説明の後、委員から消費者契約法1条(目的)を見直しの対象に含めるのかという質問があり、加納課長から目的規定の見直しについては各論点の議論状況を踏まえて必要に応じて検討するとの回答有り。

4.その他

  次回開催予定:平成27年4月10日(金)16時~

以上

 

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