法務省、「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見を募集
岩田合同法律事務所
弁護士 臼 井 幸 治
法務省民事局は、平成27年7月17日、商業登記規則(昭和39年法務省令第23号)等の一部を改正する省令案に関する意見を募集することを公表した。これは、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年5月31日法律第27号。以下「番号法」という)の施行に伴うものである。すなわち、番号法の施行に伴って関係法令を整備するいわゆる「整備法」である、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成25年法律第28号)第13条の規定により商業登記法(昭和38年法律第125号)の一部が改正され、商業登記簿に、「法務省令で定めるところにより」、特定の会社等を識別するための番号として会社法人等番号を記録することとされた。これを受け、法務省は、当該「法務省令」であるところの商業登記規則について、所要の整備をすることとしたものである。
改正案においては、商業登記規則において、会社法人等番号を12桁の番号とすること、及び、登記の申請書に会社法人等番号を記載した場合には、登記事項証明書の添付を不要とすること等が明記された。
この点、従前より、法務省民事局通達により、登記記録に最大6桁の会社法人等番号が付される運用がなされていたものの、当該番号は、会社等が存続していても、会社の登記記録が閉鎖され新たな登記記録が起こされる場合には、新たな番号が付される運用となっていたため、会社を識別する機能が不十分であった。これに対し、今回の商業登記法及び商業登記規則の改正により、会社法人等番号に、登記記録の識別機能のみならず、会社を識別する機能が包含されることとなった。
この会社法人等番号は、番号法に基づく「法人番号」ともリンクしている。すなわち、平成27年10月より、番号法に基づき、法人には1法人に1つ、13桁の法人番号が指定され、登記上の所在地に通知されることとなるところ、かかる13桁の法人番号は、12桁の会社法人等番号の前に、1桁の検査用数値を加えたものとなっている。したがって、会社法人等番号は、番号法上の法人番号の基礎番号としての機能をも有することとなり、法人番号が分かれば登記されている法人の会社法人等番号も分かることとなる。
法人番号は、法人の商号又は名称、及び本店又は主たる事務所の所在地とともに、インターネットを通じて公表されることが予定されており[1]、個人番号と異なり、その収集、保管、廃棄等に係る厳格な法規制は存在せず、利用範囲にも制限がないため、行政上の利用のみならず民間における利用も期待され、取引先情報の集約による業務の効率化や新規営業先の情報取得の一手段としての利用が期待されるところである[2]。
マイナンバーと通称される「個人番号」については、近時、多くの報道がなされる一方で、個人番号と同じく番号法に規定のある法人番号については、これを取り上げる記事や報道が少なく、社会的に認知度が低い。しかしながら、法人番号は、上記の通り、個人番号と異なり厳格な制約を受けることなく、事業活動への活用が可能となるものである。番号法というと、事業者にとっては負担ばかりで何らのメリットもないように受け止める向きがないとは言えない中、法人番号のように、ビジネス上一定の意義を有すると考えられるものもあることから、ご紹介する次第である。
会社法人等番号と法人番号の関係
会社法人等番号 |
法人番号 |
12桁の番号(管轄の登記所を表す4桁の数字、法人の種類に応じて付される2桁の数字、及び、登記記録を起こした順序で付される6桁の数字で構成される番号) |
13桁の番号(会社法人等番号の前に、1桁の検査用数値を加えた番号)
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