◇SH0395◇消費者契約法専門調査会のポイント(第17回) 児島幸良/須藤克己(2015/08/11)

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消費者契約法専門調査会のポイント(第17回)

森・濱田松本法律事務所
弁護士 児 島 幸 良
弁護士 須 藤 克 己

 

 平成27年8月7日、内閣府消費者委員会において、第17回消費者契約法専門調査会が開催された。以下、その概要を報告する。なお、本報告において、意見に亘る部分は、すべて報告者らの私見である。

 

1.配付資料

 以下の資料が配付された。

 資料1-1 中間取りまとめ(案)
 資料1-2 中間とりまとめ(案)(見え消し版)
 資料2   増田悦子委員提供資料
 資料3   河野康子委員提出資料
 資料4   柳川範之委員提出資料

 

2.議事内容

 事務局から、資料1-2を使用し、前回の中間とりまとめ案からの修正点を中心に、修正された中間とりまとめ案の説明が行われ、続いて審議が行われた。

 

3.審議

(1)審議・修正

 委員から、前回の中間とりまとめ案からの修正で、取引の安全と消費者保護のバランスが悪くなっているとの意見等があった。審議の結果、事務局提案の中間とりまとめ案から以下の通り修正が行われた。以下では修正点のみ、かつ修正後の文案を示すこととする。

  1. (ア)第1 見直しの検討を行う際の視点
  2.   第2段落
  3.  「まずは、平成13 年の法施行後、インターネットの普及を通じ、消費者による情報の収集等が容易になっている側面もあるが、消費者が関わる取引が多様化・複雑化し、情報の量も増加する中で消費者がトラブルに巻き込まれる場合もある。そこで、消費者が正確な情報を選択したうえで、意図した内容の取引を行うことができるように配慮する必要がある。また、高齢化の進展により、事業者も含めた多様な主体により高齢者の利便に資するような生活支援サービスが提供される一方で、一人暮らしの高齢者や認知症の可能性のある者等に対し、その弱みにつけ込むようにして不必要と思われる分量の商品を購入させている事例等も見受けられる。このような社会経済状況の変化を踏まえつつ、法の実効性を確保する必要がある。」
     
  4.   第3段落第2文、第3文
  5.  「同時に、消費者契約全般を対象とする包括的な民事ルールである法については、広範な業種・業態に関わるものであることを踏まえ、事業者の予測可能性を担保するとともに、経済活動が円滑に進み、「国民経済の健全な発展に寄与する」(法第1条)ように留意する必要がある。裁判で争われる場合のみならず、裁判外における事業者と消費者の関係も含めて法の影響が及ぶ点を踏まえ、問題となる事例の解決による消費者被害の救済を図るとともに、通常の取引に与える影響についても留意する必要がある。」
     
  6. (イ)第2 総則 1.「消費者」概念の在り方(法第2条第1項)
  7.   イ 第6文、第7文
  8.  「④については、権利能力なき社団を消費者とみなした裁判例もあることを踏まえ、実質的には消費者の集合体にすぎないと見ることができる団体であれば法の適用があると考えるべきという意見やそれを明文化すべきという意見がある一方で、消費者の集合体とみなす団体とそうではない団体を区別する基準を明確に作ることができるかどうかが課題であるという意見もあった。⑤については、実質的に消費者と大差ない小規模事業者に消費者保護規定が準用される旨を法文化すべきであるという意見もあったが、事業者間の格差の問題は、事業者間取引に適用される法律において検討すべき事柄であり、中小企業と大企業との間の事業者間契約を消費者契約法の適用対象とすることは慎重に検討すべきという意見があった。」
     
  9.   ウ 第1文
  10.  「以上を踏まえ、「消費者」概念の在り方については、法の適用の前提となるものであり、その範囲を明確に定める必要がある中で、問題となる場合においても、基本的には法の適切な解釈・適用により相応に対処できるものと考えられる。」
     
  11. (ウ)第2 総則 3.契約条項の平易明確化義務(法第3条第1項)
  12.   イ、ウ
  13.  「イ 法的義務として定めるという意見があったが、その意味をどこに求めるかについては様々な考え方が示されたところである。
  14.   ウ 以上をふまえ、契約条項の内容が不明確であり、その意味を確定することができない場合について、契約条項の解釈に関する条項使用者不利の原則を検討することが考えられる。よって、契約条項の平易明確化義務については、条項使用者不利の原則をどのように具体的に規律するかといった点を中心に、後述の第5の1.条項使用者不利の原則の論点において、検討することとする。」
     
  15. (エ)第3 契約締結過程 3.不利益事実の不告知(法第4条第2項)
  16.   
  17.  「不利益事実の不告知については、裁判例の状況を踏まえ、利益となる旨の告知が具体的であり、不利益事実との関連性が強いため、不実告知といっても差支えがない場合(不実告知型)と、利益となる旨の告知が具体性を欠き、不利益事実との関連性が弱いため、不利益事実が告知されないという側面が際立つことになり、実質的には故意の不告知による取消しを認めるに等しくなる場合(不告知型)とに類型化して検討する考え方がある。」
     
  18.   
  19.  「そこで、裁判例の状況を踏まえ、不実告知型と不告知型とに類型化して検討するのが適当である。」
     
  20. (オ)第3 契約締結過程 5.不当勧誘行為に関するその他の類型 (3) 合理的な判断を行うことができない事情を利用して契約を締結させる類型
  21.   ア 第2文、第3文
  22.  「高齢者の中には、加齢や認知症等の影響により判断力が低下している消費者もおり、そのような消費者と契約を締結するに当たっては、事業者には、その知識、経験、財産状況等に適合した形での勧誘を行うことが求められるという考え方が問題となることがある。また、消費者被害の中には、事業者が、認知症等を患った高齢者等の判断能力が不十分であることを利用して不必要な契約を締結させた事例や心理的な圧迫状態、従属状態などを利用して不必要な契約を締結させたなどの事例も多く見られる。
     
  23.   イ 第1文
  24.  「まず、前提として、事業者が認知症等を患った高齢者等の判断力の不足等を利用して不必要な契約を締結させた場合に、そのような契約の効力を否定すべきであるという価値判断自体については、委員の間でも、特段の異論は見られなかった。」
     
  25. (カ)第4 契約条項 4.不当条項の類型の追加
  26.   (1) 消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させ又は制限する条項 ウ 第1文から第3文まで
  27.  「①消費者の解除権・解約権を放棄させる条項については、解除権・解約権を制限する条項との区別を明確にした上で、当該条項が消費者に与える不利益のほか、当該条項を無効としたときに、実務へどのような影響が生じるかなどを勘案しつつ、これを例外なく無効とする規定を設けることについて、引き続き検討すべきである。その際、放棄させようとしている解除権・解約権として、解釈上認められるものも含めるか、法律の明文で認められるものに限るかについても、これらを区別する理由とともに、当該条項が消費者に与える不利益のほか、当該条項を無効としたときに、実務へどのような影響が生じるかなどを勘案しつつ、引き続き検討すべきである。
  28.   ②消費者の解除権・解約権を制限する条項については、どのような場合に当該条項を無効とする規定を設けるのが適切かについて、当該条項が消費者に与える不利益のほか、当該条項を無効としたときに、実務へどのような影響が生じるかなどを勘案しつつ、引き続き検討すべきである。」
     
  29.   (2) 事業者に当該条項がなければ認められない解除権・解約権を付与し又は当該条項がない場合に比し事業者の解除権・解約権の要件を緩和する条項 ウ 第1文
  30.  「事業者に本来認められない解除権・解約権を付与し又は事業者の解除権・解約権の要件を緩和する条項についても、どのような場合に当該条項を無効とする規定を設けるのが適切かについて、当該条項が消費者に与える不利益のほか、当該条項を無効としたときに、実務へどのような影響が生じるかなどを勘案しつつ、引き続き検討すべきである。」
     
  31.   (3) 消費者の一定の作為又は不作為をもって消費者の意思表示があったものと擬制する条項 ウ 第1文
  32.  「消費者の一定の作為又は不作為をもって消費者の意思表示があったものと擬制する条項についても、どのような場合に当該条項を無効とする規定を設けるのが適切かについて、当該条項が消費者に与える不利益のほか、当該条項を無効としたときに、実務へどのような影響が生じるかなどを勘案しつつ、引き続き検討すべきである。」
     
  33.   (4) 契約文言の解釈権限を事業者のみに付与する条項、及び、法律若しくは契約に基づく当事者の権利・義務の発生要件該当性若しくはその権利・義務の内容についての決定権限を事業者のみに付与する条項 ウ 第1文、第2文
  34.  「①解釈権限付与条項については、②決定権限付与条項との区別を明確にすることができるか否かをふまえた上で、当該条項が消費者に与える不利益のほか、当該条項を無効としたときに、実務へどのような影響が生じるかなどを勘案しつつ、これを例外なく無効とする規定を設けることについて、引き続き検討すべきである。
  35.   ②決定権限付与条項については、実務上の必要性や当該条項が消費者に与える不利益のほか、当該条項を無効としたときに、実務へどのような影響が生じるかなどを勘案しつつ、一定の場合には当該条項を無効とする規定を設けることも含め、引き続き検討すべきである。」
     
  36. (キ)おわりに
  37.   第2文
  38.  「本年秋以降も、本専門調査会において団体等からのヒアリングを行い、中間取りまとめに対する意見を幅広く聴取した上で、事業者の不適切な経済活動から消費者の利益を保護する必要があるという観点や事業者の適切な経済活動を阻害しないかという観点等からの検証をし、それを踏まえて上述の課題に関する検討を深めていく必要がある。」

(2)中間とりまとめ

 中間とりまとめ案は、事務局提示の案から上記(1)の修正を経て、細かな字句修正を座長に一任し、承認された。

 

4.その他

(1)中間とりまとめは、平成27年8月11日に開催される消費者契約法本会議で、座長から報告される予定である。

(2)今秋以降も本調査会が開催される見込みである。なお、具体的な日程については後日通知されることとされた。

 

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