◇SH0506◇消費者庁、源平製薬に対する景表法に基づく措置命令を発出 藤原宇基(2015/12/16)

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消費者庁、源平製薬に対する景表法に基づく措置命令を発出

岩田合同法律事務所

 弁護士 藤 原 宇 基

 

 本件は、富山県射水市所在の源平製薬株式会社(以下「対象会社」という。)が情報誌等において行った「LAPURA」と称する食品(以下「対象商品」という。)の痩身効果に係る表示(以下「本件表示」という)について、表示を裏付ける合理的根拠が示されず、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という。)4条2項の規定により同条1項1号(優良誤認)に該当するとして、消費者庁が、同社に対して、措置命令を行った事案である。

 景表法が禁止する不当な表示は、大きく①優良誤認表示、②有利誤認表示、③その他誤認されるおそれのある表示に分類される。

 このうち優良誤認表示については、内閣総理大臣(及びその委任を受けた当局)は、優良誤認表示への該当性を判断する際に、事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるとされている。当局の求めに対して、事業者が当該資料を提出しない場合、または、表示の裏付けとなる合理的根拠とは認められない資料を提出した場合、当該表示は優良誤認表示とみなされる(景表法4条2項)。かかる制度は、不実証広告規制とよばれ、その運用は、不実証広告規制ガイドライン(平成15年10月28日付公正取引委員会「不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の運用指針 ―不実証広告規制に関する指針―」、以下「ガイドライン」という。)に定められている。本件は、この不実証広告規制により優良誤認表示が認定された事案である。

 優良誤認表示の該当性を判断する際に、当局が事業者に対して合理的な根拠を示す資料の提出を求めるか否かについては、当局の裁量の余地があるが、ガイドラインには、当局が資料の提出を求めることとなる例として、契約書等の取引上の書類や商品そのもの等の情報を確認することだけでは、実際に表示されたとおりの効果、性能があるか否かを客観的に判断できない場合、例えば、痩身効果、空気清浄機能等の効果、性能に関する表示が挙げられている。また、神秘的内容(開運、金運等)、主観的内容(気分爽快等)、抽象的内容(健康になる等)に関する表示についても、これらの表示内容に加えて具体的かつ著しい便益が主張されている(暗示されている場合も含む)場合などは、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求める対象となり得る(ガイドライン)。

 ガイドラインによれば、合理的な根拠を示す資料であると認められるには、次の2つの要件を満たす必要があるとされている。

  1. ① 提出資料が客観的に実証された内容のものであること
  2. ② 表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

 そして、①客観的に実証された内容であるとは、次のいずれかに該当するものであるとされている。

  1. ㋐ 試験・調査によって得られた結果
  2. ㋑ 専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献

 事業者は、当局から資料の提出を求められた場合、原則として15日以内にこれを提出しなければならない(平成21年内閣府令第51号)。正当な事由があれば、提出期限の延長をすることができるが、新たな又は追加的な試験・調査を実施する必要があるなどの理由は、正当な事由とは認められない(ガイドライン)。

 したがって、事業者は、商品又は役務の内容に関する著しい優良性を示す表示を行う場合は、ⅰ準備している客観的な実証結果または見解が合理的根拠として妥当であるか、また、ⅱ行おうとしている表示が合理的根拠に適切に対応しているかについて、上記ガイドライン等を踏まえてあらかじめ十分に確認することが必要である。

 このように不実証広告規制の適用により優良誤認表示と認定され、措置命令が出された例は、消費者庁のHPに公表されている本年分だけでも本件以外に8件認められる(http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/index.html#public_information)。

 景表法は、平成26年6月及び11月に改正されており(11月改正法は未施行であるが、平成26年11月27日から起算して1年6月を超えない範囲内に施行されるとされている。)、11月改正法では、不当表示を行った事業者に対して、現在の措置命令に加えて、課徴金納付命令も規定されている[1]。そして、課徴金納付命令においても不実証広告規制に関する規定が設けられており、事業者が当局の求めに応じて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出ができない場合は、優良誤認表示と推定されることとなる(11月改正法8条3項。課徴金納付命令の場合、事業者に大きな金銭的不利益を与えるものであるため、「推定される」とされており、裁判所において、その時点で利用可能な資料などを用いて反論することができる。この点、措置命令において「みなす」とされているのとは異なる。)。

 したがって、事業者は、商品又は役務の内容に関する著しい優良性を示す表示を行う場合、これまで以上に、合理的な根拠を示す資料の確保に留意する必要がある。

 以下の図は、事業者が、商品又は役務の内容に関する著しい優良性を示す表示を行う場合に確認する業務フローである。

以 上

 

 【業務確認フロー】

  1. ① 商品又は役務の内容に関する著しい優良性を示す表示か
               ↓
  2. ② 契約書等の取引上の書類や商品そのもの等の情報では確認できない効果、性能等に関する表示か
               ↓
  3. ③ 効果、性能が客観的に実証された資料があるか
               ↓
  4. ④ 実際の表示が実証結果に適切に対応しているか

 


[1]この点、課徴金納付命令の基本的要件について解説したトピックス解説「消費者庁、『不当景品類及び不当表示防止法施行規則(案)』及び『不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方(案)』に関する意見募集を開始」泉篤志(12月8日)https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=1221243 が参考になる。

 

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