SH4769 東証、少数株主保護等に係る文書の公表及びCG報告書の記載要領の改訂 足立理(2024/01/16)

組織法務経営・コーポレートガバナンス

東証、少数株主保護等に係る文書の公表
及びCG報告書の記載要領の改訂

岩田合同法律事務所

弁護士 足 立   理

 

1 少数株主保護等に係る文書の公表およびCG報告書の記載要領の改訂

 東京証券取引所(以下「東証」という。)は、2023年12月26日、①「少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実」、および、②「少数株主保護及びグループ経営に関する開示例」と題する文書を公表し、あわせて、これらに関連する事項について、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(以下「CG報告書」という。)の記載要領を改訂した[1] [2](以下、当該文書の公表および記載要領の改訂を、「本文書公表等」という。)。

 支配株主[3]または実質的な支配力を持つ株主を有する上場会社においては、それらが自己の利益のためにその影響力を行使することで、少数株主の利益が損なわれるおそれ(構造的な利益相反のリスク)がある。この点につき、投資家からは、「少数株主保護やグループ経営に関する情報が投資判断上重要になるにもかかわらず、十分な開示がなされているとはいえない会社が現状では多い」との指摘があるとされる[4]。本文書公表等は、東証が、かかる状況を踏まえ、主として市場運営者として少数株主の利益が適切に保護される枠組みを構築する目的でなされたものであり、具体的には、親子関係にある上場会社(上場子会社[5]を有する上場会社、および、親会社[6]を有する上場会社)ならびに持分法適用関係にある上場会社(上場関連会社[7]を有する上場会社、および、その他の関係会社[8]を有する上場会社。以下、上記親子関係にある上場会社と総称して、「本上場会社」という。)から投資者への開示が期待される事項として、CG報告書における少数株主保護またはグループ経営に関する開示についての記載上のポイントを整理したものである。本上場会社における自発的な開示の充実を企図したものであり、新たに特定事項についての開示を義務付けるものではないが、その内容が投資判断上重要であり、また投資者との対話の出発点となる情報でもあることを踏まえ、本上場会社においては、今後、情報開示の充実に向けた十分な検討・対応が行われることが期待されている[9]

 

2 開示の現状と改善点との関係

 現行の開示制度の内容および開示の現状と、本文書公表等によって期待される改善点との関係は要旨下表のとおり整理されている[10]

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(あだち・まこと)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2014年東京大学法学部卒業。2016年東京大学法科大学院修了。2017年弁護士登録。

 

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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