◇SH0561◇企業内弁護士の多様なあり方(第7回)-訴訟への関与(上) 稲田博志(2016/02/17)

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企業内弁護士の多様なあり方(第7回)

-第3 訴訟への関与(上)-

あおぞら銀行リーガルカウンセル

弁護士 稲 田 博 志

第3 訴訟への関与(上)

1 はじめに

次のような両極の質問を受けることがある。

「企業内弁護士は、訴訟に一切関与しないのか?」

「企業内弁護士がいれば、訴訟対応に全く社外弁護士を使わなくて済むのか?」

 上記の質問は、ステレオタイプに企業内弁護士と社外弁護士を二律背反的に捉える立場や企業内弁護士の実情を十分には理解していない立場から来る(かつてよく見られた)質問であるが、これらへの端的で素直な回答としては、「企業内弁護士のみが訴訟を担当し社外弁護士を一切使わない対応もあるし、反対に、企業内弁護士は全く訴訟を担当せず社外弁護士に任せる対応もある。実際には、両者の中間でさまざまな態様が存在する。」ということになろう。

2 企業内弁護士の訴訟への関与

 企業は、利益の獲得を命題とする営利目的の団体である(もちろん、利益獲得の大前提として、法令遵守が求められるし、社会的責任等も忘れてはならない)。したがって、訴訟等の法的紛争を解決するにあたっても、企業(法務部門)は、自社の利益極大・損失極小を目指して行動することが基本方針である。企業内弁護士の訴訟への関与にさまざまな態様がある点についても、この基本方針から考えると分かり易い。

 (1) 企業の利益極大・損失極小を図る、ということは、勝訴の可能性が高い訴訟には確実に勝訴することが目標となる。そのためには、最適な主体が最適な行動を取るべきであり、企業内弁護士と社外弁護士のいずれかが担当する、と固定的に決めることはできまい。

 たとえば、ある企業の、ある種の訴訟について紛争処理経験を豊富に持つ企業内弁護士こそが「確実に勝訴できる」者であるならば、企業内弁護士を訴訟代理人として応訴することが一つの最適行動であり、目標(企業の利益極大・損失極小)に適う。

 一方、その種の紛争処理の経験を有する企業内弁護士がいない場合など、企業内弁護士だけで「より確実に勝訴できる」確信がないときは、勝訴のために、より適切な社外の弁護士(それは、一定分野でのスペシャリストかもしれないし、当該地域事情に詳しい顧問弁護士かもしれない)を起用して訴訟追行することも考えるべきだ。もちろん、社外弁護士を起用する場合でも、企業内弁護士の排除を意味しない。企業内弁護士が社外弁護士と適切に共同作業を行ったり、作業を分担したりすることも考え得る。

(以下、次号)

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