◇SH0570◇企業内弁護士の多様なあり方(第8回)-訴訟への関与(中) 稲田博志(2016/02/24)

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企業内弁護士の多様なあり方(第8回)

-第3 訴訟への関与(中)-

あおぞら銀行リーガルカウンセル

弁護士 稲 田 博 志

第3 訴訟への関与(中)

2 企業内弁護士の訴訟への関与

  (2)  一方、たとえ確実に勝訴できる場合であっても、コストを度外視して良いということにはならない。コストも、企業の利益極大・損失極小の目標にとって重要な要素であることは異論のないところであろう。

 コストの観点からは、訴訟で社外弁護士を起用すれば、弁護士費用(報酬)が生じるが、企業内弁護士なら基本的に当該訴訟に関する弁護士費用(報酬)は発生しない(契約形態等によっては、企業内弁護士であっても訴訟ごとに弁護士費用の生じる場合があるが、社外弁護士の弁護士費用よりは低廉で済む場合が多いであろう)。

 この点、クオリティを軽視し、過度にコスト抑制を重視することは危険である。たとえば、弁護士費用の削減につながるからといって、あらゆる訴訟を企業内弁護士等で無理に内製化してしまうことや、また、当該企業の実情や当該訴訟の分野に明るくない社外弁護士に弁護士費用が低廉であるからといって全て任せてしまうことは、企業のリーガルリスク管理としてバランスが良くないことは理解できるであろう。仮に当該訴訟の弁護士費用は低廉で済んだとしても、中長期的には高い代償を支払うことになりかねない。

 しかし、一般的には、最善のチームと評価できる限り、社外弁護士を起用せずに企業内弁護士によって紛争処理することは、訴訟解決コストの抑制につながり、企業の利益極大・損失極小の目標に適う。その意味でコストは重要な要素である。

 (3) 企業の利益極大・損失極小をはかるためには、勝訴できる事案で勝訴すること、コストを重視することが重要であることを指摘したが、実際には、これらは画一的に判断できるものではない。

 実際の訴訟において、「より確実に勝訴できる者(チーム)」による「勝訴確実な行動」を考える場合、その具体的な解(判断)は、企業やその状況によってさまざまに異なるということを次に指摘したい。

 たとえば、消費者金融を業とする企業が、簡易裁判所において比較的少額の定型的な債権取立訴訟を複数提起する場合、社外の弁護士を起用せずに、法曹資格を持たない業務担当者が特別代理人として訴訟追行する姿は以前から見られるところである。

 これは当該業種で反復継続する訴訟類型については、社内に十分な経験やノウハウが蓄積されうること、社外弁護士を起用することはコストがかかり過ぎること等から、採用されている態様である。業種やビジネスモデルによって具体的な解(判断)が異なるということである。

(以下、次号)

 

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