◇SH0638◇LINE、一部報道内容に関する当社の見解について 鈴木正人(2016/04/20)

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LINE、一部報道内容に関する当社の見解について

岩田合同法律事務所

弁護士 鈴 木 正 人

 

 LINE株式会社は、2016年4月6日、7日に、一部報道内容(同社が関東財務局の立入検査を受けている点)に関する同社の見解を公表した(以下「公表文」という。)。

 同社は、資金決済法(以下「法」という。)が定める前払式支払手段発行者である。前払式支払手段とは、大要、①金銭等の財産的価値が記載・記録されること(価値の保存)、②金銭・数量に応ずる対価を得て発行される証票等、番号、記号その他のものであること(対価発行)、③代価の弁済等に使用されること(権利行使)の3つの要件を満たすものであり(法3条1項)、典型的にはプレペイドカード、前払いの電子マネーなどが該当する。前払式支払手段の発行を行うためには自家型発行者の届出又は第三者発行者の登録が必要となる(法5条、6条)。前払式支払手段発行者は、年2回の法定基準日時点で、前払式支払手段の未使用残高が1000万円超となるときは、その基準日未使用残高の2分の1以上の額に相当する金銭を、基準日の翌日から2ヶ月以内に、発行保証金として主たる営業所・事務所の最寄りの供託所に供託する義務を負う(法14条)。なお、銀行等との発行保証金保全契約の締結や信託会社等との発行保証金信託契約の締結で発行保証金の全部又は一部の供託の供託をしないことが可能である(法15条、16条)。金融当局は、前払式支払手段発行者に対して検査実施や業務改善命令の発出などの行政処分を行う権限を有する(法24条乃至29条)。

 公表文によると、同社は、大要、①関東財務局の立入検査は数年に一度の定期的な検査であり、後述の「宝箱の鍵」につき資金決済法上の必要な届出をしなかったとの疑いに起因するものではないこと、②LINE POP「宝箱の鍵」に関して、社内担当者による初期段階でのメールによる問題提起をうけ、2015年に法務担当者・外部弁護士への相談、検討を経て、当時の仕様について前払式支払手段に該当しないと判断したが、法令上の判断基準が明確でないことから、より保守的な対応を行うこととし、仕様変更を行ったこと、③資金決済法上の資産保全方法としては現金供託のほか、銀行等との発行保証金保全契約の締結の方法もあり、キャッシュアウトするとしても財務状況に与える影響は軽微であること、を述べている。

 この点、①については、金融当局の立入検査は一般的に通常検査と特別検査があると言われているが、今回の関東財務局の立入検査の種類については外部からは明らかではない。②については、前払式支払手段の該当性に当たっては、前述の3要件(①価値の保存、②対価発行、③権利行使)の検討が必要であるが、公表文が言及するように判断基準が明確でないとの側面もあると考えられる。この点、法が成立した際の平成22年3月1日付金融庁パブコメ回答では、ゲーム内通貨に関して、「法3条1項の定義に該当すれば前払式支払手段として法の適用対象となりえること、いわゆる「おまけ」として対価を得ずに発行されるものについては対価発行の要件を満たさないことから前払式支払手段には該当しないこと、「おまけ」と称して発行されるものであっても、当該「おまけ」とともに提供される商品・役務の内容に照らして、実質的に利用者が当該「おまけ」に対して対価を支払っている場合には、前払式支払手段に該当する可能性があることに留意する必要があると考えられること」の見解が示されている。ゲーム内アイテムについても上記見解の考え方が妥当する余地があると考えられ、ゲーム仕様を策定する際に前払式支払手段の該当性を検討するのが肝要であると思料する。③については、前述のとおり供託、発行保証金保全契約、発行保証金信託契約の3種類の保全手段がある。各手続の概要は以下のとおりである。

 

 発行保証金の供託、発行保証金保全契約及び発行保証金信託契約の比較

  発行保証金の供託 (法14条) 発行保証金保全契約 (法15条) 発行保証金信託契約 (法16条)

行為

供託所への供託

所定金融機関等との契約締結

信託銀行等との契約締結

発行保証金

所定の債券(国債、地方債、政府保証債、所定の社債)で充当可能。法定評価。

不要(金融機関等に対する保証料の支払いで足りる。有事には金融機関等が保全金額供託。)

金銭、銀行等に対する預貯金、所定の債券(供託よりも広範)で充当可能。法定評価。

当局手続

追加供託時の当局届出

契約締結の当局届出

契約締結の当局承認

 

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