◇SH0661◇厚労省、労働契約法に基づく「無期転換ルール」への対応を促すための支援策を公表 徳丸大輔(2016/05/17)

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厚労省、労働契約法に基づく
「無期転換ルール」への対応を促すための支援策を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 徳 丸 大 輔

 

 厚労省は、平成28年4月27日、労働契約法に基づくいわゆる無期転換ルール(18条1項)に関して、内容の周知と厚労省が今年度実施する支援策について発表した。同省は、今年度、支援策として、無期転換制度の導入支援のための「モデル就業規則」の作成、企業へのコンサルティング、労働契約等解説セミナー、先進的な取り組みを行っている企業事例の厚労省ホームページ上での紹介などを実施するとのことである。

 周知のとおり、平成24年の労働契約法の改正により、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できることが規定されている(労働契約法18条1項参照)。労働契約法18条自体は既に平成25年4月1日に施行されているが、通算5年の契約期間の算入は施行期日以降に新たに契約が締結又は更新された時点からとされているため(改正法附則2条参照)、通算5年を超えて無期転換ルールが適用されることになるのは、早くとも平成30年3月31日以降となる。

 無期転換ルールへの対応としては、大きく分けて、①何らかの形で無期契約に転換する、②無期転換ルールに抵触しないように雇用管理を行うが考えられるところであるが、各対応のメリット、デメリットを簡単にまとめると次の内容が考えられる[1]

対応

①無期契約に転換する

②雇用管理を行う

メリット

長期勤続や定着への期待、要員の安定確保、技能の確実な蓄積伝承、雇止めを巡る紛争回避など

人件費の増加や固定化の回避など

デメリット

雇用調整が必要となった場合の対応、正社員との間の仕事や労働条件の調整(就業規則を含む規定等の見直し)など

雇止めを巡る紛争の増加など

 有期労働契約の労働者を雇用する企業によって事情は異なるため、どの対応が適切であるかを一般化することは困難であるが、今般の厚労省の発表内容は、2年後に本格化する無期転換ルールに備え、各社において対応の検討、確認に資すると思われることから紹介する次第である。

 なお、無期転換ルールの仕組み等については、平成27年8月17日付タイムライン(https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=1145678)を参照されたい。また、無期転換ルールには、大学等及び研究開発法人の研究者、教員等に対する特例や、②高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者及び定年後引き続き雇用される有期雇用労働者に対する特例が設けられており、後者の概要等については、平成26年11月12日付タイムライン(https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=905381)を参照されたい。

 


[1] 各対応に対するメリット・デメリットの詳細を検討する上では、独立行政法人労働政策研究・研修機構の実施した調査に対する企業からの回答(平成27年12月18日 http://www.jil.go.jp/press/documents/20151218.pdf)が参考となる。
 ただし、当該資料は調査結果の概要(速報)であり、調査結果の全容は、今月末をめどに公表する予定とのことである。

 

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