◇SH0703◇厚労省、ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等 藤原宇基(2016/06/20)

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厚労省、ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等

岩田合同法律事務所

弁護士 藤 原 宇 基

 

 過重労働は、労働者に疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因であり、脳・心臓疾患、精神疾患発症との関連性が強いとされている。

 厚生労働省は、過重労働による心身の健康障害を防止するため、労働安全衛生法に基づく関連指針の策定、関連通達の発出、各種チェックリスト・パンフレット・リーフレットの作成、ポータルサイトの作成等を行っており、それらを紹介しているのが標記のホームページである。

 以下、同ホームページでも紹介されている過重労働による心身の健康障害を防止するための措置について概要を説明する。

 

1.事業場における労働者のメンタルヘルスケア

 厚生労働省は、事業場における労働者のメンタルヘルスケアの取組みについて予防医学を参考として以下の3段階に分類している。

  1. ① 一次予防
    労働者自身のストレスへの気付き及び対処の支援並びに職場環境の改善を通じて、メンタルヘルス不調となることを未然に防止する。
  2. ② 二次予防
    メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う。
  3. ③ 三次予防
    メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する。

 また、取組みの方法を主体別に下記の4つに分類している。

  1. ① セルフケア
    労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスを予防、軽減するあるいはこれに対処する方法
  2. ② ラインによるケア
    労働者と日常的に接する管理監督者が、心の健康に関して職場環境等の改善や労働者に対する相談対応を行う方法
  3. ③ 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
    事業場内の産業医等事業場内産業保健スタッフ等が、事業場の心の健康づくり対策の提言を行うとともに、その推進を担い、また、労働者及び管理監督者を支援する方法
  4. ④ 事業場外資源によるケア
    事業場外の機関及び専門家を活用し、その支援を受ける方法

 これらを組み合わせたメンタルヘルスケアの具体的取組み、体制は下記の図のようなものが想定されている。なお、下記図には、ストレスチェック制度は含まれていないが、(2)職場環境等の把握と改善、(3)メンタルヘルス不調への気づきと対応に位置づけられる。

 (出典 厚生労働省 独立行政法人労働者健康福祉機構「職場における心の健康づくり」)

2.過重労働による健康障害防止対策

 厚生労働省は長時間にわたる過重労働を排除し、労働者に疲労の蓄積を生じさせないために下記の点について事業主に適切な措置を講じるよう求め、また、各労働基準監督署窓口に対して指導を徹底するよう要請している(平成18年3月17日付基発第0317008号、最終改正平成28年4月1日付基発0401第72号 「過重労働による健康障害防止のための総合政策について」)。

  1. ① 時間外、休日労働時間の削減
    ・36協定における限度時間、特別延長時間への適合
    ・実際の時間外労働を月45時間以下とするよう努める等
  2. ② 事業者による労働時間の適正な把握
  3. ③ 年次有給休暇の取得促進
  4. ④ 労働時間等の設定の改善
  5. ⑤ 労働者の健康管理に係る措置の徹底
    ・産業医、衛生管理者、衛生推進者、衛生委員会の選任、設置
    ・健康診断の実施
    ・長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対する面接指導等の実施
    ・ストレスチェック制度の実施
    ・過重労働による業務上の疾病を発生させた場合の原因の究明・再発防止

 上記のメンタルヘルス及び過重労働防止の取組みは多岐にわたるため、企業からは、どこから手を付ければよいか分からないという声もよく聞くところであるが、まずは、事業場内産業保健スタッフ(産業医・保健師・衛生管理者等、人事労務スタッフによる兼任でもよい。)を選任するところから始め、その者が法定の健康診断やストレスチェック又は労働者や管理監督者からの相談等により職場環境を把握し、改善施策を実施していくのがよい。

 過重労働により労働者に健康障害が生じた場合、企業は安全配慮義務違反の責任を問われる可能性がある(代表的な判例として、長時間労働等の結果うつ病にかかり自殺した事案として電通事件(最高裁第二小法廷平成12年3月24日判決)、長時間労働等の結果脳出血により死亡した事案としてシステム・コンサルタント事件(最高裁第二小法廷平成12年10月13日決定)がある。)。労働者の健康障害の発生を防ぐため、また、安全配慮義務違反の責任を問われないため、企業には上記の各措置を取ることが求められる。

 

【参考:厚生労働省 こころの耳「15分でわかる事業場内産業保健スタッフ等によるケア」】
 http://kokoro.mhlw.go.jp/staffcare/assets/pdf/elearning.pdf

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