経産省、社外役員等の役割・サポート体制に関する中間取りまとめを公表
岩田合同法律事務所
弁護士 冨 田 雄 介
平成26年6月30日、経産省が、「社外役員を含む非業務執行役員の役割・サポート体制等に関する中間取りまとめ」及び「社外役員等に関するガイドライン」を公表した。
「中間取りまとめ」は、①社外役員等に期待される役割、及び②社外役員等がその役割を果たすために企業が整えるべきサポート体制の在り方について、実際の事例等をもとに整理したものであり、「ガイドライン」はそのサマリーである。
平成26年6月20日に、社外取締役の導入を促進することを内容とする改正会社法が成立し、今後、企業による社外取締役の選任に向けた取組が進展することが想定されているものの(平成26年6月30日付タイムライン・トピックス解説「会社法の一部を改正する法律案の可決成立」(伊藤広樹)参照)、上記①及び②の点については、従前十分な整理がなされていなかったところである。
現在、社外取締役の導入を検討している会社や、社外役員等の制度を見直そうとしている会社等にとって、「中間取りまとめ」の整理は参考になると思われる。
以下では、「中間取りまとめ」及び「ガイドライン」の内容を簡単に説明する。
「中間取りまとめ」は、上記①の点(社外役員等に期待される役割)に関し、社外取締役の役割を、(a)業務執行役員の提案のネガティブチェック(「経営のモニタリング」)、(b)業務執行役員の提案に対する、又は自ら提案して行うポジティブなアドバイス(「経営に対するアドバイス」)、及び、(c)業務執行役員の評価(指名・報酬)に分類している。ここでは、社外取締役を、単に業務執行役員の監督のみを行う存在として位置づけるのではなく、経営に対し積極的な役割を果たす存在となり得ることを、具体例を交えつつ説明している点(上記(b))が注目される。
また、「中間取りまとめ」は、上記②の点(社外役員等のサポート体制)に関し、(ア)企業がどのような人選を行うか、及び(イ)社外役員等を支えるために、どのような社内体制を構築し、取組を行うべきかという二点の問題意識があると指摘している。その上で、上記(ア)について、社外役員等の選任においては、単に「独立性」という消極要件に着目するだけでなく、社外役員等が期待される役割を果たすための積極要件をどのように確保していくかについて議論することが必要と指摘している点が注目される。
「ガイドライン」は、「中間取りまとめ」を踏まえ、企業・役員等の遵守事項、推奨事項、検討事項等をまとめている。このうち社外取締役に関する遵守事項(遵守しなければならない事項)の概要は以下のとおりである。
「ガイドライン」で摘示された社外取締役に関する遵守事項 |
【取締役会の運営】 ・ 取締役会議長は、取締役会の主催者として、業務執行役員と社外役員等との建設的な関係を確保し、開かれた議論を行うことができる環境を整備・促進すべきである(3.3.3)。 【社外役員等の役割】 ・ 社外役員等は、取締役会の上程事項に限らず、自らが知り得た情報の中に、違法性を疑わせる事情があれば、他の社外役員等と連携して、調査し、取締役会で意見を述べること等により、違法又は著しく不当な業務執行を防止すべきである(5.1.1)。 ・ 社外役員等は、自らに期待された役割を十分理解した上で職務の執行に当たり、必要となる時間を十分に確保すべきである(5.1.5)。 【社外役員等の人選】 ・ 企業は、社外役員等の人選に当たって、社外役員等に期待する役割を、社外役員等及び株主に対して明らかにすべきである(5.2.1)。 【費用の負担】 ・ 企業は、社外役員等がその役割を果たすために必要な費用(外部専門家への委託費用等)を負担すべきである(6.3.1)。 |
以 上