◇SH0346◇TDK、取締役会の実効性の分析・評価に関するプレスリリースを公表 別府文弥(2015/06/17)

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TDK、取締役会の実効性の分析・評価に関するプレスリリースを公表

岩田合同法律事務所

弁護士 別 府 文 弥

1.はじめに

 東京証券取引所において、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という。)の制定及びこれに伴う有価証券上場規程等の一部改正が行われ、平成27年6月1日からCGコードが上場会社に適用されている。

 CGコード原則4-11③では、「取締役会は、毎年、各取締役の自己評価等も参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである。」と規定されているところ、取締役会全体の実効性について分析・評価する方法や、開示する「結果の概要」の内容については、各上場会社の合理的な判断に委ねられている(油布志行ほか「『コーポレートガバナンス・コード原案』の解説 Ⅳ」(旬刊商事法務2065号50頁))。

 そうした中で、TDK株式会社(以下「TDK」という。)は取締役会の実効性の分析・評価に関するプレスリリース(以下「本プレスリリース」という。)を2015年5月26日に公表した。新聞報道等によれば、同社は日本企業として取締役会評価を専門の評価会社に依頼した初の事例とされているところ、上記のCGコード原則4-11③の定めが適用開始されたことに伴い、今後評価会社に対し、取締役会の実効性に関する分析・評価の依頼を検討する企業が増えると考えられることから、以下その概要を紹介する。

2.本プレスリリースの概要

 本プレスリリースによれば、TDKにおいて行われた取締役会の実効性に関する分析・評価の概要は以下のとおりである(詳細は上記URLを参照されたい)。

<評価対象・内容>

① 外部コンサルタントによる取締役会全体、委員会(指名諮問委員会及び報酬諮問委員会)、各取締役、各監査役の実効性に関する評価

② TDKの取締役会の体制と、国内外の競合他社及び国内外の主要なガバナンス・コード記載の原則等との比較並びにTDKの取締役会の位置づけに関する比較分析

<評価方法>

① 取締役及び監査役が取締役会全体・委員会・各取締役、各監査役の実効性に関する質問票に回答

② 当該回答に基づく取締役及び監査役へのインタビュー

③ ①②のプロセスで行われた第三者評価に基づいた報告書が取締役会に提供され、これを参考とした取締役会における取締役会全体の実効性の分析・評価

 上記評価の結果、本プレスリリースでは、TDKの取締役会において、「経営に関する監督機能を発揮するための体制が構築されていることが確認され」た旨述べられている。

3.分析・まとめ

 本プレスリリースによれば、外部専門家において上記評価内容に関する評価がなされた後、これを参考として取締役会における取締役会全体の実効性の分析・評価が行われており、外部評価を参考とした内部評価が行われているといえる。

 英国のコーポレートガバナンス・コードによれば、FTSE 350 会社(ロンドン証券取引所に上場する企業のうち、時価総額上位350位の企業)における取締役会の評価は、少なくとも 3 年ごとに外部者によって実施されるべきとされている(http://www.fsa.go.jp/singi/corporategovernance/siryou/20140807/06.pdf)。

 これに対して、日本のCGコード補充原則4-11③では、上記の通り、取締役会全体の実効性について分析・評価する方法は各上場会社の合理的な判断に委ねられており、外部評価を導入するか、また仮に導入する際の評価の利用方法については各社の対応が異なってくるものと考えられるが、本事例は外部評価の利用方法の1つを示したものとして参考となる。

 また、CGコード補充原則4-11③では、取締役会の実効性に関する分析・評価結果の概要の開示が求められているところ、本事例は各上場会社における当該事項の開示事例として参考となると考えられる。

(べっぷ・ふみや)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2010年東京大学法科大学院卒業、2011年弁護士登録(新64期)。一般企業法務、M&A、渉外関連業務(契約書・クロスボーダー取引・競争法関係)、株主総会、訴訟等の案件に従事。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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