◇SH0715◇東証、東証上場会社における独立社外取締役の選任状況<速報>を公表 伊藤広樹(2016/06/29)

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東証、東証上場会社における独立社外取締役の選任状況<速報>を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 伊 藤 広 樹

 

 本年6月17日、株式会社東京証券取引所は、東京証券取引所(以下「東証」という。)に上場する会社における独立社外取締役の選任状況に関する調査結果(速報)を公表した。以下、その概要について解説を行うこととする。

 まず、社外取締役を選任する上場会社(市場第一部を指す。以下同じ。)の割合は、98.5%であった。この割合は、昨年の時点で既に94.3%に至っていたが、本年になり、ほぼ全ての上場会社において社外取締役が選任されている状況になったと言える。なお、現時点で社外取締役を選任していない上場会社も少なからず存在しているが、このような上場会社は、適切な候補者が見当たらないといった消極的な理由よりも、社外取締役を選任することにメリットを見出せないことを理由としている(例:サイボウズ株式会社)等、意図的に社外取締役を選任しない方針であることが窺える。
 また、独立性を有する社外取締役(独立社外取締役)を選任する上場会社の割合も、87.0%から96.2%へと増加している。各社において社外取締役を選任する際、その独立性にも配慮していることが窺われよう。

 次に、複数の独立社外取締役を選任する上場会社の割合は、昨年と比較して急増していることが挙げられる。具体的には、48.4%から77.9%へと急増し、4分の3超の上場会社が複数の独立社外取締役を選任することとなった。5年前(平成23(2011)年)には複数の独立社外取締役を選任する上場会社の割合が15.0%に留まっていたことに鑑みると、近年の急増傾向は、我が国においてコーポレートガバナンスに関する議論が急速に進展し、各社において独立社外取締役の存在が強く意識されるようになったことの現れであると言えよう。

 これらの背景としては、平成26年改正会社法の施行により社外取締役を置くことが「相当でない理由」の説明義務が課されるようになったこと(同法327条の2)等や、有価証券上場規程上、1名以上の独立役員である取締役を確保する旨の努力義務が課されている(同規程445条の4)ことに加えて、「独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである」とするコーポレートガバナンス・コード(原則4-8)の考え方が浸透してきている結果と言えよう。また、より実務的には、機関投資家や(特に海外の)議決権行使助言機関の議決権行使基準が、社外取締役の存在やその独立性を重視していることに影響されているとも評価できる。

 

独立社外取締役の選任状況

●  社外取締役を選任する上場会社:        94.3%(昨年)→98.5%(本年)

●  独立社外取締役を選任する上場会社:      87.0%(昨年)→96.2%(本年)

●  複数の独立社外取締役を選任する上場会社:   48.4%(昨年)→77.9%(本年)

平成26年改正会社法、有価証券上場規程、コーポレートガバナンス・コード(原則4-8・4-9)、機関投資家や(特に海外の)議決権行使助言機関の議決権行使基準等を背景

 

 以上のとおり、現在の上場会社においては、独立社外取締役を選任する、しかも複数選任することがもはや当然の状況に至っていると評価することができる。
 昨今、社外取締役には、伝統的な経営に対する監視・監督機能に加えて、経営に対する助言機能も求められるようになり、その役割は益々拡大している。特に、先般の株式会社セブン&アイ・ホールディングスの指名・報酬委員会の事例にみられたように、社外取締役は、経営陣の選定・報酬への関与等を通じて、経営に対する直接的な影響力を行使できる立場になりつつある。このような状況の下、各社においては、(独立)社外取締役の在り方や(独立)社外取締役に求める機能・役割を改めて整理する必要があると考えられ(コーポレートガバナンス・コード(原則4-7))、また、各社においてこのような機能・役割を求めることができる適切な候補者を選定することは決して容易でないと考えられることから、選定にあたっての準備(選定基準・独立性基準等の策定等)・調査(候補者となり得る者の情報収集・調査・選定等)等がより重要になっていると言えよう。

以 上

 

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