◇SH2532◇知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会、コンテンツ分野会合(第6回)を開催  工藤良平(2019/05/14)

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知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会、コンテンツ分野会合(第6回)を開催 

岩田合同法律事務所

弁護士 工 藤 良 平

 

 知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会コンテンツ分野会合(第6回)が平成31年4月23日に開催され、インターネット上の海賊版対策についてのヒアリング等が実施された。

 インターネット上の海賊版対策については、平成30年4月に知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議が公表した「インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策」の中で、インターネットユーザーを著作権侵害コンテンツへ誘導するウェブサイト(いわゆる「リーチサイト」)規制のための法制度整備と静止画(書籍)のダウンロードの違法化等が、制定すべきインターネット上の海賊版サイト対策関係法案に盛り込むべき事項として記載された。

 これを受け、文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会等において、著作権法改正に向け、平成30年6月から年末にかけて、リーチサイト規制の論点整理や著作権侵害コンテンツのダウンロード違法化の対象範囲の拡大についての議論やパブリックコメントが実施されたうえ、平成31年2月13日、法制の方向性等についての考え方がまとめられた文化審議会著作権分科会報告書が公表された。この分科会報告書を踏まえ、平成31年の通常国会提出に向けた著作権法改正案が準備されたが、著作権者や一般国民ユーザ等から主に静止画(書籍)のダウンロード違法化への懸念が払拭されるに至らないという状況の中、同年3月13日、上記著作権法改正案の通常国会への提出が見送られることとなった。

 平成31年3月29日開催の知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会コンテンツ分野会合(第4回)において配付された事務局資料によれば、2019年度中もリーチサイト規制と静止画(書籍)のダウンロードの違法化等を含む著作権法改正案の国会への法案提出準備が進められるものとされており、その後の同年4月23日に開催された同会合(第6回)では、日本漫画家協会の権利者団体・企業や学識経験者に対するインターネット上の海賊版対策についてのヒアリングヒアリングが実施された。

 同会合において、日本漫画家協会から、「違法とされる範囲が適切に設定されたうえでダウンロードを規制する方法を模索すると同時に、アップロードの方を重点的に取り締まる画期的な手立ても研究、開発されて欲しい」という意見が述べられている。

 また、同会合では田村善之教授(東京大学大学院法学政治学研究科)による「ダウンロード違法化拡大をめぐる論点~インターネット時代の著作権法における寛容的利用の意義~」と題する資料が配布されている。同資料では、田村教授の見解として、寛容的利用(権利があっても実際には権利行使されないために寛容されている利用)を擁護する世界が望ましい著作権制度として述べられるとともに、ダウンロードを広汎に違法化した場合、権利者が保護を欲していない著作物についても人々の利用を萎縮させ、保護の必要性もない著作物を含めて一律に著作物を利用する自由を萎縮させ、寛容的利用による(暫定的)均衡が崩れるという問題点が指摘されている。また、現在の著作権法改正案では違法化するダウンロードの範囲を限定するため、法文上で行為者の「主観的要件」を設定して範囲を絞るという対策も検討されているところ、このような対策に関しても、「結局、問題の著作物が紛れ込んでいることを認識してしまえば、その著作物の部分のみを外すことが困難である場合にはウェブページ全体やpdfファイル全体のダウンロード、さらにはスクショを諦めざるを得ないことを意味する」という意見が述べられたようである。

 今後、ダウンロードの違法化等を含む著作権法改正案の法案提出に向けた準備が継続される状況の中で、ダウンロード違法化についての民事・刑事それぞれの対象範囲、主観的要件等がどのように取り扱われ、改正法案に反映されるのか、引き続き注視していく必要があろう。

以 上


 

【内閣府知的財産戦略推進事務局「検証・評価・企画委員会本会合における主な論点」(知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会コンテンツ分野会合(第6回)配布資料)2頁】

 

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