◇SH0796◇企業内弁護士の多様なあり方(第34回)-特別付録「外部弁護士から見た企業内弁護士」(上) 矢部耕三(2016/09/14)

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業内弁護士の多様なあり方(第34回)

特別付録「外部弁護士から見た企業内弁護士」(上)

ユアサハラ法律特許事務所

弁護士・弁理士 矢 部 耕 三

 

 企業内弁護士の多様なあり方が本コラムのテーマである。企業内弁護士のあり方が多様化してきているということであれば、外部弁護士の立場から見える企業内法務の在り方も多様化しているということになる。これは何を意味するのかといえば、即ち外部弁護士にとっての企業依頼者からのニーズや外部弁護士への期待のされ方が多様になってきているともいえるだろう。

 そもそも弁護士であるならば、客観的事実の探索・発見能力と基本的な法律・先例についての解釈能力、そして、それらに基づく判断能力が必要なことは言うまでもない。

 その一方で、従来の非資格者中心の企業内法務による外部弁護士の雇い方、依頼の仕方においては、外部弁護士は「先生」業であり、裁判所という役所への代理士業として、あるいはそれができることを前提に外部からの権威を持った法的意見を言う者として、その能力を発揮すれば良かった。

 しかし、今や企業内弁護士という、企業活動の内側に居ながらかつ法律家という外部弁護士と同様の能力を持つ人達が出てきたのである。こういう人達が依頼者の側に居る時、外部弁護士は彼らの多様な法務ニーズに応えきれるのかという疑問に直面せざるをえない。

 なぜなら、企業内弁護士がいる企業から依頼される案件というのは、ⅰ)当該企業の基本的法律問題については既に概ね処理済みであり、事案複雑であるか、又は深い専門的考察を求められる事項だからこそ外部の意見を求められるものであるか、あるいはⅱ)他社事例や立法動向なども踏まえた外部弁護士の経験に基づいたより適格な法的アドバイスや代理行為を期待されるものになることは容易に予想がつくからである。またより進んだ状況では、外部弁護士であっても、ⅲ)企業内弁護士の役割を補完するために、当該企業の活動にとっての半ばオールラウンドな外部アドバイザーとして機能できる能力というのも求められているように思われる。

 ⅲ)の部分については、「普通の企業顧問業務と変わらないではない。」と思われる外部弁護士もいるかもしれない。しかし、その理解に対しては、企業内弁護士からは、即刻異議がでることだろう。

 ともすれば、従来の外部弁護士の意識においては、企業を依頼者として紛争処理の代理をすること、あるいは契約書の検討をすれば、それが即ち「企業法務」と理解してきたふしがある。しかし、そのような場合、えてして当該企業活動自体がどういうものかという理解は、法律解釈論のための前提事実としてピンポイントに把握することで終わることが多い。その結論が、個別依頼者企業の企業活動それ自体に及ぼす影響については、当事者たる企業自身が判断すればよいとされるのが今までの相場であった。

(以下、次号)

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