◇SH0837◇取締役協会、「監査等委員会の監査の展望~取締役が行う監査等について~」を公表 (2016/10/14)

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取締役協会、「監査等委員会の監査の展望~取締役が行う監査等について~」を公表

――海外主要国の実務を紹介

 

 日本取締役協会の監査等委員会設置会社研究会(座長=井口武雄・三井住友海上火災保険シニアアドバイザー)は、10月11日、「監査等委員会の監査の展望~取締役が行う監査等について~」を公表した。これは、2014年改正会社法により導入された「監査等委員会」について、今後の展望を占う上で参考になると考えられる海外の主要国の監査委員会の実務を紹介し、わが国の実務の検討に活用することを目的としてまとめられたものである。

 報告書はまず、「監査等委員会の監査の意義」を、監査役や監査委員会による「監査」と同一に理解するかどうかについて、「監査役、監査委員会、監査等委員会が行う『監査』の意義については、取締役としての地位の有無にかかわらず、基本的に同義と考えるべきである」とする。そして「『監査』の意義は、役員による『監査』、あるいは上場企業のコーポレートガバナンスに対する社会や市場の期待に基づき、その時々において適切に解釈して運用するのが合理的であろう」としている。

 その上で、過去20年超のわが国株式市場の長期にわたる低迷の原因とされる日本企業の収益力低下の要因の一つがコーポレートガバナンスの脆弱性にある可能性もあることから、「近時、企業価値の向上・競争力の強化等の観点でのコーポレートガバナンスの見直しが求められる状況にある」と分析。2014年の改正会社法、2015年のコーポレートガバナンス・コードといった上場会社のコーポレートガバナンスをめぐる動きには資本市場のグローバル化という背景があり、「中長期的には、我が国のコーポレートガバナンスの在り方は、国際標準に近似する方向での見直しが進められる可能性が高い」と考えられ、「監査等委員会の『監査』についても、例えば、米国における取締役会の内部委員会である監査委員会(audit committee)の職務と同様の機能を有するものと位置付ける方向で解釈され、運用される可能性は否定できない」とする。このため、主要国における監査委員会の職務や活動について十分な認識を有しておくことがきわめて有用であるとして、以下、具体的な実務の紹介を行っている。

 「主要国の監査委員会の実務」に関して、まず米国の監査委員会に対するルールについては、1934年証券取引法、2002年SOX法、SEC規則、各証券取引所規則の規定内容等を紹介した上で、監査委員会には、一般的に次のような監督機能が期待されているとしている。

  1.  • 決算財務報告プロセス/財務情報に関する情報開示プロセスの監督(財務報告プロセスの信頼性の監督、アナリスト/格付機関等に対して会社が提供する業績情報・財務情報・利益ガイダンス等の監督)
  2.  • リスク管理とコンプライアンスの監督(財務会計上および関連するリスクの識別/対応プロセスの監督、不正の防止/発見方針および同プログラムの確認、倫理規定/法令順守の重要性を尊重する企業風土の支援)
  3.  • 内部監査機能の監督(監査計画および監査結果の監督)
  4.  • 独立会計監査人の監督(監査計画および監査結果の監督に加え、独立会計監査人のパフォーマンス評価、選任・解任、報酬および独立性に関する承認等)

 さらに、「監査委員会の具体的な活動に関する参考文書」として、米国ビジネス・ラウンドテーブル(BRT)によるガイダンス「コーポレートガバナンスの原則2016年」と、米国公認会計士協会(AICPA)の監査委員会向けツールを紹介している。

 このうち、BRTの8原則に示された監査委員会については、さらに具体的な内容として、

  1.  • 財務会計の専門性
  2.  • 兼任について
  3.  • 外部会計監査人(外部会計監査人の選任と再任、外部会計監査人の独立性の監督)
  4.  • 財務諸表
  5.  • 内部統制
  6.  • リスク評価とリスク管理
  7.  • コンプライアンス
  8.  • 内部監査

を紹介した上で、「監査委員会の役割と責任範囲は、法定によるものを除き、企業が設置するその他の機関(任意の諮問委員会等)とそれらの役割と責任範囲次第で変わるものであり、各社が自社にとって最適な設計となるように決定する」ものであると説明している。

 英国の監査委員会に関するルールについては、EU指令、英国会社法、2000年金融サービス市場法等に基づく「FSAハンドブック」(現:FCAハンドブック)の開示透明性規則と、財務報告評議会(FRC)の「UKコーポレートガバナンス・コード」の関係を示すなどした上で、UKコーポレートガバナンス・コードにおける監査委員会の責務を紹介している。そして具体的な活動内容の事例として、英バークレイノルズ銀行の開示例を掲げている。

 さらに、ドイツにおける規制や実務のほか、その他の欧州やアジア諸国における取組みにも触れている。

 そして今後の展望としては、「取締役会や監査委員会、監査等委員会の位置づけや責任範囲を規定する法的フレームワークに差異があるものの、ソフトローとしてのコーポレートガバナンスの枠組みや任意の取り組みによって、国際標準ともいうべき類似した運用に収斂する傾向がある」として、「監査等委員会設置会社の制度も、このような国際標準への収斂の一つの方法ともいえる」と指摘。「諸外国の事例を参考に、ベストプラクティスの構築を目指したい」としている。

 

  ◯日本取締役協会、「監査等委員会の監査の展望~取締役が行う監査について~」の公表(10月11日)

   http://www.jacd.jp/news/icacc/161011_post-168.html

 

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