◇SH2643◇中国:ネットワーク安全審査弁法(意見募集案)(下) 川合正倫(2019/07/03)

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中国:ネットワーク安全審査弁法(意見募集案)(下)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

 

4. 安全審査の発動

 本弁法は、2種類のネットワーク安全審査の発動方法について規定している。

 第一に、運営者がネットワーク製品・サービスを仕入れる際に、製品・サービスのリリース後にもたらす潜在的な安全リスクを予測し、安全リスク報告を作成することを義務付け、以下の状況に該当する可能性がある場合には、自らネットワーク安全審査弁公室に対してネットワーク安全審査を申告しなければならない(本弁法第6条)。

  1. ▷ 重要情報インフラが全体的に運行を停止し、又は主な機能について正常に運行できないとき
  2. ▷ 大量の個人情報及び重要なデータが漏洩し、紛失、毀損、又は海外へ移転するとき
  3. ▷ 重要情報インフラの運行維持、技術支持、更新についてサプライチェーンの安全脅威があるとき
  4. ▷ その他、重要情報インフラの安全を著しく害するリスクがあるとき

 第二に、ネットワーク安全審査業務体制メンバー組織(即ち、上記の表に記載された国家インターネット情報弁公室、国家発展改革委員会、工業情報化部等の複数の部門)が、ネットワーク製品・サービスの仕入れ活動、情報技術サービス活動が国家安全に影響を与える又は影響を与えるおそれがあると認めた場合には、ネットワーク安全審査弁公室は手続に従って中央ネットワーク安全・情報化委員会に報告して審査を求めるとされている(本弁法第19条)。2017年弁法では所管官庁のみがネットワーク安全審査を発動できるが、本弁法は、運営者が自らネットワーク安全審査を申告する規定を新たに取り入れている。

 

5. 安全審査の手続

 本弁法では、ネットワーク安全審査の手続を明確化している。具体的には、ネットワーク安全審査弁公室、ネットワーク安全審査業務体制メンバー組織、中央ネットワーク安全・情報化委員会による3レベルの審査体制が構成される。すなわち、ネットワーク安全審査弁公室がネットワーク安全審査を受理した後、30営業日以内に初期審査を完成しなければならず、状況が複雑である場合に15営業日を延長することができる(本弁法第9条)。なお、インターネット安全審査に参加した人員は、審査中に知り得た情報等に対して秘密保持義務を負い、審査以外の目的に使用してはならない旨も規定されている(本弁法第15条)。

  1. <手続所要時間>
  2. ▷ ネットワーク安全審査弁公室による初歩審査:30営業日(さらに15営業日まで延長することが可能)
  3. ▷ ネットワーク安全審査業務体制メンバー組織による初歩審査意見への回答:15営業日
  4. ▷ 特別審査:原則として45営業日(延長可能)

 

6. 安全審査の評価要素

 本弁法の立法趣旨として、重要情報インフラの安全管理水準を高め、国家の安全を維持することと規定されている(本弁法第1条)。また、製品・サービスの提供者は、製品・サービスを提供する利便性を利用して、ユーザーのデータを違法に取得すること、ユーザーの設備を違法に管理・操作すること、ユーザーによる製品・サービスへの依存性を利用して不正な利益を得ること、ユーザーに更新等を強制することが禁じられている(本弁法第18条)。

 ネットワーク安全審査において国家安全リスクを評価する際に考慮される主要要素として、以下の7要素が規定されており(本弁法第10条)、2017年弁法と比べて、評価要素がより全面的であると評価されている。

  1. ▷ 重要情報インフラの継続的な安全かつ安定した運用への影響
  2. ▷ 個人情報と重要なデータの安全
  3. ▷ 製品・サービスの管理性、透明性及びサプライチェーンの安全
  4. ▷ 防衛軍事、重要情報インフラ関連の技術と産業への影響
  5. ▷ 製品・サービス提供者による法律及び行政法規の遵守状況
  6. ▷ 外国政府による製品・サービス提供者への補助金および管理等の要素

 

7. まとめ

 上述したとおり、本弁法は、概して2017年弁法と比べて、ネットワーク安全審査制度の適用範囲を明確化、限定し、また、ネットワーク安全審査の手続及び評価要素についても具体的に規定している。今後の実務において、本弁法がどのように具体的に適用されるのか、また、関連部門が安全審査を実施する具体的な基準及び関連する法執行の状況について、引き続き注目すべきであろう。

以上

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