◇SH0971◇働き方改革実現会議、「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」中間報告およびガイドライン案を公表 堀田昂慈(2017/01/18)

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働き方改革実現会議、「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」
中間報告およびガイドライン案を公表

岩田合同法律事務所

弁護士:堀 田 昂 慈

 

 政府の働き方改革実現会議は、平成28年12月20日、「『同一労働同一賃金の実現に向けた検討会』中間報告」(以下「中間報告」という。)および「同一労働同一賃金ガイドライン案」(以下「ガイドライン案」という。)を公表した。

 働き方改革実現会議は、第3次安倍第2次改造内閣が目標として掲げる「働き方改革」[1]の実現のために設置された会議であり、厚生労働省職業安定局に設置された検討会の一つである「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」での検討内容も踏まえ、今回の中間報告およびガイドライン案の公表に至ったものである。

 中間報告の概要は下記図1のとおりである。同報告では、我が国における同一労働同一賃金の実現(「正規」か「非正規」かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇の確保)のため、長期的には、企業別に労働条件設定がなされている現在の雇用システムから企業横断的・雇用形態横断的に賃金が決定・比較検討される雇用システムへの移行の必要性について言及されるとともに、早期の待遇改善を実現させるための手段としてガイドラインを策定する方針が示された。

 もっとも、ガイドライン案の内容については、有期雇用労働者およびパートタイム労働者の基本給、手当等の事項別に総論的な説明を行うほか、問題となる典型例・問題とならない典型例を示すものに留まった。そして、示された典型例についても、例えば、賞与について無期雇用フルタイム労働者には職務内容や貢献等にかかわらず全員に支給しているが、有期雇用労働者又はパートタイム労働者には支給していない場合が問題となる例として挙げられ、他方、無期雇用フルタイム労働者が生産効率や品質の目標値に対する責任を負っており、目標が未達の場合に処遇上のペナルティを課されている一方で、有期雇用労働者は当該ペナルティを課されていない場合に、無期雇用労働者に対して「処遇上のペナルティを課していることとのバランスに応じた」高額の基本給を支給することや、有期雇用労働者に対して「ペナルティを課していないこととの見合いの範囲内で」賞与を支給しないことが問題とならない例として挙げられるなど、一見して結論が明らかな例や、なお判断基準が不明確な例が散見された。そのため、現時点では、各企業において、問題となる典型例に明らかに該当する雇用体系を採用しているような事情がない限り、今回の中間報告およびガイドライン案の公表を受けて早急な対応を要する特段の事項は想定されない。

 ただし、ガイドライン案の前文によれば、政府は、今後、ガイドライン案をもとに法改正の立案作業を進め、ガイドライン案についても関係者の意見や改正法案についての国会審議を踏まえて、最終的なガイドラインとして確定するものとしている。そのため、法改正の方向性やガイドラインの内容については、今後も流動的に変更する可能性がある。

 働き方改革は、安倍政権の最重要政策の一つにまで位置づけられるに至っている。いわゆる「非正規」雇用[2]を行っている企業としては、今後もガイドライン案を踏まえた法改正や最終的なガイドライン制定に向けた動向を注視し、適宜雇用体系の見直しを図っていくことが必要となろう。

 

図1 「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」中間報告(概要)

※ 首相官邸のホームページより引用



[1] 第3次安倍第2次改造内閣は、「働き方改革」の実現のため、新たに働き方改革担当大臣を設置している。

[2] 中間報告およびガイドライン案においては、一様に「非正規」という呼称の一掃が目標に掲げられている。

 

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