◇SH1011◇厚労省、「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」の論点整理を公表(2017/02/10)

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厚労省、「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」の論点整理を公表

――36協定における時間外労働規制のあり方等、長時間労働の是正に向けて――

 

 厚生労働省は2月1日、「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」(座長=今野浩一郎・学習院大学教授)がとりまとめた論点整理を公表した。

 長時間労働の問題や時間外労働規制に関しては、「ニッポン一億総活躍プラン(平成28年6月2日閣議決定)において、「労働基準法については、労使で合意すれば上限なく時間外労働が認められる、いわゆる36(サブロク)協定における時間外労働規制の在り方について、再検討を開始する」こととされていた。これを受けて、同検討会において昨年9月9日から、わが国における時間外労働の実態把握や諸外国における制度等につき検討を行ったものである。

 論点整理の内容をみると、「マネジメント、業務プロセス、人事評価等の改革」については、時間外労働が生じる要因として、「業務量の過多や業務の繁閑」だけでなく、「マネジメント能力の低さ、『誰も読まない議事録の作成』や『過度に凝った資料の作成』などに代表される過剰品質を求めるマネジメント、職場の意識改革不足」も指摘されるとした。そして、「長時間労働を是とするような企業の業務プロセスや、人材育成・評価の在り方を含めた人事制度」を変える必要があり、同時に、働く側も「効率的に働くことが自らの健康や生産性の向上に資する旨、意識する必要がある」としている。

 「企業のコンプライアンスと法の執行」については、「36協定」の制度自体の不知、協定締結の失念等、「労働時間規制が浸透していない実態があり、改善を図る必要がある」として、「まず企業自らが法令遵守にしっかり取り組まなければならない」としている。そして、36協定の履行確保のためには現場の労使の努力が不可欠であり、特に過半数組合が締結当事者ではない場合には「労使がしっかりコミュニケーションを図り協力して取り組んでいくことが期待される」とした上で、「引き続き労働基準監督署において必要な監督指導を行い、法令の履行確保を図ることも必要である」としている。

 「時間外労働の限度」に関する規制のあり方については、「労使協定で定める範囲内で、割増賃金を払えば上限なく時間外労働が可能となる現在の仕組みを改め、一定期間内の総労働時間の枠を定め(つまり、労働時間の総量規制を行い)、その枠の中で健康を確保しつつ効率的に働くことを可能とする制度への転換を指向すべきである」としている。その際、「たとえば1日や1週などの短い期間を単位に労働時間の上限を規制すると、業務の繁閑や働く人のニーズに対応した労働時間の設定が困難になることに留意が必要」であるとするほか、「業務の特性や取引慣行等それぞれの課題があり、長時間労働の傾向の強い業種・職種」については「実態を十分精査した上で、労働時間の計画的な見直しを進めるためのアプローチも検討する必要がある」としている。

 さらに、「1日単位の休息期間を確保するインターバル規制は、睡眠時間の確保や疲労蓄積を防ぐ観点から重要な考え方」であるとして、「企業活動や業務の繁閑と両立させるノウハウ・好事例の提供などの支援を通じて、企業自らがこれを導入することを促していくべきである」としている。

 「労使の役割」に関する規制のあり方については、「労働時間の上限の設定は、これまでの働き方を大きく変えるものになるので、各企業、各職場で長時間労働の是正、働きやすい職場環境づくり等に向けて労使が率直に意見交換し、具体的な改善策に取り組むことが重要であり、『労働時間等設定改善委員会』の設置等、労使による取組を促進するべきである」としている。

 「情報の公開」に関する規制のあり方については、「法違反に対する公表制度は強化するとともに、長時間労働の是正やワークライフバランスの改善、及びその継続に積極的に取り組む企業が、労働市場、商品市場、株式証券市場等において積極的に評価される環境を作ることが求められる」としている。

 「下請け等の取引慣行への対応、意識改革、その他」については、まず、中小企業における長時間労働には「発注元や親事業者を含めた業界全体としての取引環境の改善が必要であり、政府はそのような業界全体の問題を協議する場の設定に努め、業界としてのコンセンサス形成を図るべきである」としている。そして、「過当競争が低価格での過剰サービスを生み、長時間労働を引き起こして」いると指摘して、「提供したサービスの価値に見合った対価が支払われるよう、商慣行の在り方について、改善の手法を検討することも必要である」とし、さらに、「過度のサービス要求を控えることが、長時間労働の是正につながり、働く人の健康と幸せにつながることを喚起し、国民全体の意識改革を促すことも重要である」としている。

 
 
  1. ○ 厚労省、「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」の論点整理をとりまとめました(2月1日)
    http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000150188.html
  2. ○「論点整理」
    http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000150176.pdf
  3. ○「参考資料」
    http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000150160.pdf
  4. ○ ニッポン一億総活躍プラン(平成28年6月2日閣議決定)
    http://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/#plan
 
  1. 参考
    ◆SH0684◆公取委、「平成27年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組」を公表(2016/06/04)

    下請法の運用等をめぐる最近の動向
    ――公取委による平成27年度の下請法運用状況と「ニッポン一億総活躍プラン」の長時間労働是正に係る下請事業者保護通報制度の拡充――
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=1458886

 
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