◇SH1159◇経済同友会、「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方」に対する意見を公表(2017/05/16)

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経済同友会、「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方」に対する意見を公表

--解雇無効時の金銭救済制度導入等を求める--

 


 経済同友会は4月28日、雇用・労働市場委員会(委員長=橘・フクシマ・咲江 G&S Global Advisors Inc.取締役社長)がとりまとめた「『透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方』に対する意見--解雇無効時の金銭救済制度導入と既存制度改善に関する考え方--」を公表した。

 労働紛争解決システムについては、「日本再興戦略改訂2015」(2015年6月30日閣議決定)および「規制改革実施計画」(同)に基づき、厚生労働省に設置された「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」において、①すでに制度化されている多様な労働紛争の解決手段がより有効に活用されるための方策、②解雇無効時における金銭救済制度のあり方とその必要性、が検討されているところである。

 同友会では、①解雇が無効とされる場合において、公正かつ客観的な基準に基づき、金銭的な救済を行い得る制度を構築すること、②既存の制度も、より使いやすく、より公平で納得性の高い解決が得られる制度に改善すること、③これらを通じ、法的手段に訴えられず、十分な補償もなく不当解雇される働き手を、訴訟にまで発展する手前の労働審判やあっせんで迅速に救済するとともに、悪質な不当解雇が抑止されるような仕組みとすること、という問題意識の下で、制度改革の望ましい方向についての意見をまとめたものである。

 

 今回の意見書によると、「現行制度の問題点」のうち、「民事訴訟、労働審判、あっせんにおける予見可能性の低さ」については、わが国の労働紛争解決システムには、解雇の効力が裁判で争われ、解雇が無効とされる場合において公正かつ客観的な金銭救済の仕組みが存在しないため、仮に裁判所が解雇を無効と判断したときに雇用関係が存続しても当事者が良好な関係を保ち続けることは現実的に困難な場合が多く、結果として何らかの金銭的解決が図られることになるが、解決金額等の明確な基準が存在しない、としている。また、訴訟で解雇無効を争う以前の段階でも、雇用終了に関する紛争が発生した場合、個別労働紛争解決制度や労働審判制度には「公正・客観的な基準が存在せず、個別事案毎の判断によるものであるため、解決金額や解決に要する時間に関する予見可能性が低く、紛争が取り扱われる機関や手続によって解決内容に大きな差が生じているのが実態である」と指摘している。さらに、「労働組合等の支援が受けにくい中小企業の従業員の場合には、法的手段に訴えることも難しく、不当解雇であっても十分な解決金が得られないことも少なくない」としている。

 「各制度の利用率の低さや制度間の連携の弱さ」については、「働き手が紛争事案の性質や希望する解決方法に照らして、どの仕組みを利用したら良いのかがわかりにくいことに加え、事案の振り分けが上手く機能していないため、諸制度が有効に利用されていない」などと指摘している。

 その上で、「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方」に対する意見としては、まず、「金銭救済制度の導入」について、次のような意見をまとめている。

  1. ○ 意見1「解雇無効時における金銭救済制度を導入し、補償金の算定方法や水準を具体的に法定すべきである。」
    (1) 解雇が無効とされる場合において、原職復帰を希望しない場合、当事者の選択により、金銭補償可能な金銭救済制度を法的に整備すべきである。
    (2) 金銭補償額は、賃金の半年分から1年半分の範囲内とすべきである。
    (3) 解雇の判断と金銭救済の判断とを同時に行うべきである。
  2. ○ 意見2「労働審判やあっせんにおいても、解雇無効時の金銭救済制度を参考に、解雇に係る解決金額の目安となるガイドラインを策定すべきである。」

 意見1の内容をみると、解雇が無効とされる場合において、「公正かつ客観的な基準に基づき、金銭的な補償を行い得る金銭救済制度を法的に整備すべきである」として、その際、金銭補償の申立てについては、①働き手の申立てがなされた場合を原則とし、②労使間の信頼関係が破綻している場合など、きわめて限定的な場合に限り使用者側の申立てを認めることが望ましいとして、さらに、「本人が職務復帰を希望する場合や、雇用関係の継続が労使双方にとって最善な場合などは、働き手の職場復帰を原則とする仕組みとするべきである」などとしている。

 意見2の内容をみると、「解雇無効時の金銭救済制度が導入され、補償金額の算定方法や水準などが明確になれば、民事訴訟に至る前の紛争解決制度(労働審判やあっせん)においても、解決金額に関する客観的な目安(ガイドライン)を示すことが可能になる。それぞれの制度において、こうした基準やガイドラインを定めれば、どのようなケースにおいてどのような制度を利用するといった制度間の連携や振り分けも可能となる」などとしている。

 

 さらに、「現行のあっせん制度に係る機能改善」については、以下のような意見をまとめている。

  1. ○ 意見3「現行のあっせん制度の機能強化(①参加義務を課す、②調査に応じる義務を課す、③振り分け機能を強化する、④労働委員会および労政主管部局のあっせんに時効中断効を付与する)を図るべきである。」

 

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