◇SH1168◇実学・企業法務(第48回) 齋藤憲道(2017/05/18)

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実学・企業法務(第48回)

第2章 仕事の仕組みと法律業務

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

3. 製造・調達

(4)機械設備

 工場では、機械設備を購入(又は内製)して生産活動を行う。特に装置産業では設備投資の優劣が市場競争における勝敗に直結するので、投資に先だって設備投資効率を慎重に検討する。

法令で保守点検が義務付けられている消防用設備・エレベータ・浄化槽・事業用電気工作物等[1]の設備のメンテナンスについては、所定の資格を有する専門業者に委託することが多い。

a. 発注、受入
 機械設備の発注[2]は、事業目的を実現できる仕様・金額・納期等を定めて行う。発注した機械等が納入されると、契約で定めた仕様に合格していることを厳格に検収して経理の受入処理[3]を行う。稼動開始後は、常に仕様通りに作動していることを確認し、定期的にメンテナンス[4]を行う。

b. 生産技術の強化、製造ノウハウの秘密管理
 特性・品質・コスト等の市場競争で優位に立つ商品の製造を可能にする加工方法・製造方法(量産化、高速化、低コスト化、無人化、多種対応等)・組立方法・検査方法等を開発した場合、その技術ノウハウは、①特許・実用新案を出願すると、その内容が公開されて競争相手に知られ、かつ、②競争相手がその技術を無断使用して機械設備を内製しても、相手の工場に立ち入って権利侵害の証拠を入手することができないために、特許出願等せずに「営業秘密」として管理する企業が多い。

  1. (注) 特許出願せず「営業秘密」として管理する技術については、職務発明と同様に取り扱い、社内の職務発明規程(発明報奨等を規定)の適用を考える必要がある。

 また、社内に生産技術者及び機械製造体制を確保して、製造ノウハウを組み込んだ機械設備を内製し、これを営業秘密管理して、製造ノウハウが下請先等を通じて競争相手に流出するのを防ぐ企業もある。

(5) 生産管理

 企業の生産活動では、①指定する特性・品質の製品を、②指定する時期に、③指定する量(個数、重量、容量)だけ、④効率的に生産し、⑤完成品を指定された場所・納期に納入する。これを実施するために、材料在庫管理・生産計画・工程管理(機械設備稼働・作業員稼動・歩留り・標準管理)・品質管理(材料・工程・完成品)・出荷管理等のさまざまな管理が行われる。

 生産管理の手法は、駄菓子・乾電池・既製服のような「見込生産」と、ウェディングケーキ・オーダーメイド服・ビル用電源・高層ビル等の「受注生産」とで異なる。

  1. ⑴「見込生産」では、自ら商品の仕様を決定し、需要予測に基づいて、販売量・生産量(生産能力・生産リードタイム・材料調達を考慮する)・在庫量(保管スペース・廃棄リスクを考慮する)を計画する。計画以上に売れて品切れ状態になると売り損じが発生するが、逆に、売上が計画を下回ると、売れ残った在庫を生産者(又は販売業者)が自己負担で抱え込むリスクがある。
    材料・仕掛品・完製品等の在庫は、その分だけ資金を寝かす(場合によっては廃棄する)ことになるので、できるだけ少なくする。
    生産リードタイムが長い製品の場合は、部品材料を生産ラインに投入した時から完成品として出荷されるまでの間、どの工程で、どれだけの量の仕掛品を保有するのが最も経営に寄与するかを、市場への即時供給の効果、滞留在庫発生及び在庫陳腐化のリスク等を総合的に勘案して判断する。
  2. ⑵「受注生産」の場合は、仕様・数量・納期・価格を予め契約で決めているので、材料を市況を見ながら有利な価格で調達し、納期から逆算して製品を製造し、指定日に指定場所に納入(機械の場合は設置)する。
    例えば、人工衛星を受注して直ちに生産しても、肝心の打上げロケットが出来ていなければ、地球を周回する軌道に乗せることはできない。
  1. (注) 農業・水産業等では、収穫の量や時期が気象の影響を受けて安定しない。このリスクを打破するために、全天候型の工場栽培や人工養殖等の技術開発が進められている。


[1] 消防設備点検資格者(消防法施行規則)、昇降機検査資格者(建築基準法12条3項、平成17年国土交通省告示571号)、浄化槽設備士・浄化槽管理士(浄化槽法42~47条)、電気主任技術者(第1種すべて、第2種17万V未満、第3種5万V未満。電気事業法)

[2] 発注・購入は、社内決裁基準に従って稟議を行う。

[3] 固定資産又は建設仮勘定に計上する。

[4] 消耗部品(カッター、歯車、駆動ベルト等)の定期交換、給油、グリース途布等

 

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