◇SH1174◇経団連、「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」を公表(2017/05/19)

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経団連、「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」を公表

--LGBTの人々に関する対応に焦点--

 

 日本経済団体連合会は5月16日、「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」を公表した。

 わが国の最重要課題の一つとされている「ダイバーシティ(多様性)・インクルージョン(包摂)社会」の実現に向けて、経団連では、①女性の活躍推進、②若者・高齢者の活躍支援、③働き方改革、④高度外国人材の受け入れ促進、⑤バリアフリー社会の実現、等に取り組んできたところである。

 今般、経団連では、ダイバーシティ・インクルージョン社会を実現する上で重要な要素の一つである「LGBT(性的マイノリティ)」の人々に関する対応に焦点を当て、本提言をまとめたものである。本提言は、LGBTという言葉についての概説、LGBTに関する国内外の動向の紹介を行った上で、わが国企業による取組みの方向性を示すものとなっている。

 このうち、「わが国企業による取り組みの方向性」をみると、まず、企業がLGBTへの適切な理解を促すとともにその認識・受容を進める上での主な視点としては、以下のものが挙げられるとしている。

  1. ① 幅広いプールからの人材獲得と退職の抑制--「LGBTフレンドリー」を打ち出すことで、LGBT当事者である優秀な人材のみならず、当事者の周囲にいる人材を獲得し得る。また、社内のLGBTの社員らによる会社への忠誠心の向上にもつながる。
  2. ② 働きやすい社内環境の整備による生産性の向上--LGBTを含め多様性を尊重する社内風土が醸成され、個々人の能力を最大限発揮できる環境が整備され、生産性が向上する。
  3. ③ 自社のブランド価値向上--先進的な取組みを進める企業として、世間に対してメッセージを発信することができ、自社のブランド価値向上につながる。
  4. ④ 法的リスク回避と社員の人権保護--LGBTへの人権侵害による訴訟等のリスクを回避できると同時に、自社の社員を人権侵害の被害から保護することができる。
  5. ⑤ ビジネスの拡大--LGBTへの理解を深めることで、同性パートナーの存在を念頭に置いた商品の開発等、ビジネスの拡大につながる。

 このような視点から企業がLGBTに関する取組みを進める上では、「LGBTへの理解を促進し、差別を禁止すること、また、当事者のカミングアウトの有無にかかわらず、多様な人材の存在を前提とした環境・制度の整備を進めることが求められ……その際、LGBTに関わる様々なNPO法人等との意見交換や協議を図ることは有用である」としている。

 そして、具体的な取組みとして、以下のようなものを掲げている。

  1. ① 性的指向・性的自認等に基づくハラスメントや差別の禁止を、社内規定等に具体的に明記--性的マイノリティの存在を自社が認識していることを社内外に示すべく、LGBTへのハラスメントや差別の禁止を社内の方針として具体的に明記し、社内外に発信。
  2. ② 社内の人事・福利厚生制度の改定--配偶者に適用される福利厚生を同性パートナーにも適用する等、LGBTに配慮した社内制度を整備。
  3. ③ 社内セミナー等の開催--LGBTへの理解促進に向け、社内各層への研修や勉強会を開催。
  4. ④ 社内相談窓口の設置--LGBTの社員がカミングアウトの有無にかかわらず利用できるような相談窓口・ホットラインを設置。相談窓口の設置にあたっては、相談者のプライバシー確保に配慮することが必須。
  5. ⑤ ハード面での職場環境の整備--性別を問わないトイレの設置等、LGBTが働きやすい職場設備を整備。
  6. ⑥ 採用活動におけるLGBTへの配慮--採用時に性別を確認しない等、LGBTの学生等に配慮した採用活動を実施。
  7. ⑦ LGBTに配慮した商品・サービスの開発--多様なセクシャリティが存在することを念頭に置き、男女だけの性別枠組みにとらわれない商品やサービスを開発。
  8. ⑧ 社外イベントへの協力、NPO法人等との連携--企業やNPO法人が実施する、LGBTへの理解促進等を目指すためのイベントへ参画。また、LGBTに関する取組みを進めるにあたり、先進的な取組みを行うNPO法人等と連携。

 なお、本提言では、経団連会員企業を対象にしたアンケートの結果も示されており、各企業における具体的な取組みの事例一覧も、企業名とともに経団連のHPで公表されている。

 

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