◇SH1278◇コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(3)-組織文化とは何か 岩倉秀雄(2017/07/11)

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コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(3)

――組織文化とは何か――

経営倫理実践研究センターフェロー

岩 倉 秀 雄

 

 前回は、コンプライアンス経営やCSR経営を進める上で、制度や仕組みを整えることは重要であるが、より重要なことは、組織の価値観(組織文化)にコンプライアンスやCSRの価値観を浸透・定着させることであるという筆者の主張を述べた。

 また、組織文化は、目に見えにくいうえに、長年にわたってその組織の成功要因として形成されたものなので、組織文化を革新することは非常に難しく、コンプライアンスやCSRの価値観を組織文化に浸透・定着させるためには、様々な課題(今後の研究テーマになる)があることも述べた。

 今回は、そもそも組織文化とは何かについて、シャイン(Edgar H.Schein)を中心に、学術的厳密さにこだわらず、実務者が組織革新を実施する上で知っておくべきレベルで概念を整理する。

 

【シャインによる岩倉の定義】

 組織文化については、様々な研究者が様々な定義をしている[1]が、最も有名なのが、研究者で実務家のシャイン(前出)であり、筆者の認識に近いので、シャインの定義をもとに、岩倉の定義を明確にする。

 

1. シャインの定義

 シャインは、初期の著書で、組織文化を以下の通り定義している。

 「組織文化とは、組織が生成・発展するにつれて形成された組織メンバーに共有され、無意識のうちに機能する組織の認識の仕方に影響を与えるパターン」
(Edgar H.Schein(1985)“Organizational Culture and Leadership”清水紀彦=浜田幸雄訳『組織文化とリーダーシップ――リーダーは文化をどう変革するか』(ダイヤモンド社、1989年)8頁~12頁)

 また、白桃書房より2016年出版の尾川丈一監修、松本美央訳『企業文化〔改訂版〕――ダイバーシティと文化の仕組み』(Edgar H.Schein(2009)”The Corporate Culture Survival Guide : New and Revised Edition)では、基本的に定義に変更はないものの、「共有された暗黙の仮定」の重要性を指摘している。(同書99頁)

 すなわち、「文化は、文物、標榜された価値観、共有された暗黙の仮定の3レベルで表され評価される」とし、共有された暗黙の仮定のレベルに掘り下げることが重要であると述べている。(いわゆるシャインの文化の3レベル説。これについては、次回に述べる)

 

2. 岩倉の定義

 筆者は、シャインを踏まえ、組織文化を以下の通り定義する。

 「組織が創生し成功・発展する過程で形成・共有され、無意識のうちに組織の認識の仕方に影響を与える価値観」とする。

 なお、組織文化と組織風土は厳密には区別されるが、ここでは、暗黙の価値前提を踏まえて組織風土[2]が形成されるとしてとらえ、組織風土と組織文化の厳密な区別はしない。

 なぜなら、第三者委員会が調査報告で問題を指摘する時には、「組織風土」の言葉を使うことが多く、実践として組織風土改革を実施する場合には、厳密な言葉の区別は不要だからである。ただ、筆者は、シャインが、より深いレベルを考察することの重要性を指摘していることを踏まえ、「組織文化」の用語を使用する。

 なお、今後、シャインをベースに論を進めることから、次回は、シャインの組織文化の3レベルについて考察する。



[1] 郭智雄は、「韓国企業における企業文化の特性」立教経済学論叢49号(1996)で、以下のシャイン以外の定義をあげている。

加護野忠
(1982)
組織体の構成員に共有されている、価値、規範、信念
河野豊弘
(1988)
企業に参加する人々に共有されている価値観と、共通の考え方、意思決定の仕方、又は行動パターンの総和
梅沢正
(1990)
企業が培養し定着させている価値と規範の総称であり、内容的には、①経営理念や企業哲学など企業体としての価値観、②伝統、儀式、慣習、慣行などを含む組織規範、③社員に共有された思考・行動パターンの3要素よりなる
Hatch
(1993)
組織構成員たちが共有している価値および仮定として人工物および象徴で伝達できるもの
Deal and Kennedy
(1982)
組織の構成員に重要な意味を与える価値、神話、英雄および象徴の総体である

[2] 組織風土は、「動機付けや行動に影響を及ぼすと考えられる仕事環境の測定可能な特性」で、組織の成員からみた心理的環境要因であり、各人の満足や動機づけに影響を与える。

 

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