チリにおける新たな外国投資法の概要
西村あさひ法律事務所
弁護士 梅 田 賢
1. はじめに
1974年の外国投資法(法令Decree Law 600、以下「旧投資法」という。)の立法以来、外国投資家によるチリへの投資の多くが同法に基づき行われてきた。しかし、2016年1月1日、旧投資法が廃止され、新たな対内直接投資に関する法律 (Law No. 20,848、以下「新投資法」という。)が施行された。今後、チリにおいて日本企業が投資をする際には、当該新投資法の適用を検討することが予想されることから、本稿においては、当該新投資法の主な特徴について紹介する。
2. 新投資法の主な特徴について
新投資法においては、旧投資法においても認められていた公式為替市場における自由な取引や、チリ国内投資との差別的取り扱いを受けないことが認められているほか、主な特徴として以下の事項が挙げられる。
概 要 | 備 考 | |
法適用 |
新投資法の適用を受けるためには、外国投資促進機関(Foreign Investment Promotion Agency)から認証(Certificate)を取得することが必要 |
旧投資法においては、旧投資法の適用のためには外国投資委員会(Foreign Investment Committee)との投資契約の締結が必要とされていた |
関連機関 |
上記外国投資促進機関(Foreign Investment Promotion Agency)及び大統領に対して外国投資の誘致にかかるアドバイス等を行うための委員会(Committee of Ministers)を新たに設置 |
旧投資法における外国投資委員会(Foreign Investment Committee)は廃止 |
対内直接投資 |
外国投資家による、500万 USドル又は他国通貨での相当額以上の外国資本又は資産のチリへの移転等をいう |
新投資法では、旧投資法において規定されていた外国投資の形態(外国通貨、有形資産、負債の資本組入れ及び資本化が可能なテクノロジー)に、利益の再投資が追加され、他方、利益の資本組入れによる投資は除外された |
送金規制 |
チリにおける一定の課税義務を果たした場合、資本金も含め、いつでも送金が可能 |
旧投資法においては、資本金をチリ国外に送金するには、投資後1年経過することが必要とされていた |
税制 |
旧投資法において認められていた固定税率(42%)制度を廃止。但し、一定の製品について付加価値税(VAT)の免除は認められている。 |
後記のとおり経過措置規定により4年間は旧投資法の適用を求めることが可能 |
上記のとおり、旧投資法においては、投資に際して投資契約の締結が必要とされていたが、新投資法においては認証の取得で足りることとなった点は外国投資家にとっての利点であると指摘されている。さらに、送金規制の変更点を踏まえれば、従前に比して投資を促進する制度変更であると考えられる。
3. 経過措置について
新投資法において一定期間の経過措置が認められている。具体的には、(i)旧投資法に基づき、2016年1月1日よりも前に締結された投資契約については、引き続き旧投資法が適用される。また、(ii) 外国投資家は、2016年1月1日以降の4年間は、チリへの投資に際して、旧投資法の適用を求めることができるものの、この場合の固定税率は、従前の42%ではなく、44.45%とされている。
以 上
(注)本稿は法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法又は現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所又はそのクライアントの見解ではありません。