◇SH1279◇金融庁、「経営者保証に関するガイドライン」Q&Aの一部改定 大浦貴史(2017/07/11)

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金融庁、「経営者保証に関するガイドライン」Q&Aの一部改定

岩田合同法律事務所

弁護士 大 浦 貴 史

 

 平成29年6月28日、金融庁は、「経営者保証に関するガイドライン」(以下「本ガイドライン」という。)Q&Aの一部改定について公表した(なお、具体的な改定内容は本ガイドライン研究会の事務局である日本商工会議所・全国銀行協会のホームページにアップロードされている。)。解釈上の疑義を解消することを通じて、全体的に、本ガイドラインの適用場面を広げる内容の改定となっており、金融機関側でも、事業会社側でも、押さえておきたい改定である。

 まず、基本的な事項についておさらいしておくと、本ガイドラインは、経営者保証の弊害(経営者保証が、挑戦的な事業展開や、早期の事業再生の阻害要因となっている等)を解消すること等を目的として、経営者保証をとらない融資を検討すべき場面や、保証金額の限定、保証債務の整理等について定めるものである。また、本ガイドラインの留意事項をとりまとめたものとして、本ガイドラインQ&Aが策定されており、これまでに2回改定されている。今回のQ&Aの改定のポイントは以下のとおりである。

  1. ① 本ガイドラインの適用対象の明確化(Q&A3の改訂)
  2.   本ガイドラインの適用対象について、企業以外の者(社会福祉法人など)も対象になり得ることが明確化された。
     
  3. ② 弁済の誠実性や適時適切な開示の要件の明確化(Q&A.3-3及び3-4の新設)
  4.   本ガイドラインの適用要件として、主たる債務者及び保証人の双方が弁済について誠実であり、財産状況等を適時適切に開示していることが求められているが、これらの要件については、債務整理着手前や支払いの一時停止前の行為にも適用されるものの、この場合においては、不適切な開示等によって本ガイドラインの適用が直ちに否定されるものではなく、金額や態様、動機の悪質性等を総合的に勘案して適用の有無を判断すべきものであることが明確化された。
    また、自由財産(差押えが禁止されている財産など)を弁済の原資としないことをもって、弁済の誠実性が否定される余地はないということが明確化された。
     
  5. ③ 免責不許可事由が生じるおそれがないことの判断時点の明確化(Q&A.7-4-2の改定)
  6.   保証債務の整理時における本ガイドラインの適用要件の一つとして規定されている、保証人に免責不許可事由(財産の隠匿など)が生じるおそれがないという要件については、保証債務の整理の申し出から弁済計画の成立までの間において、免責不許可事由に該当する行為をするおそれのないことを意味する旨が明確化された。
     
  7. ④ 残存資産の範囲や算出方法の明確化(Q&A.7-14-2の新設)
  8.   保証債務の履行後、保証人の手元に残すことができる残存資産の範囲について、保証人が保有する資産を処分・換価して得られた金銭の一部についても、保証人の残存資産の範囲に含むことが可能であること等が明確化された。

 本改定により、本ガイドラインの一層の活用が進むことが期待される。

 

 

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