コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(33)
―組織のあるべき姿の討議―
経営倫理実践研究センターフェロー
岩 倉 秀 雄
前回は、第1ステップの討議を推進した運動推進事務局員が、この運動をどのようにとらえたのかについて述べた。全社的なプロジェクトを推進する場合には、中核推進事務局は、現場の動きを把握し問題に直ちに対応できなければならない。
運動の第1ステップの討議では、当初は「事件は乳業部門の一部の工場が発生させた事件で、我々は被害者ではないか」と受け止めていた他部門(購買・生産・指導部門等)も、運動の重要性を認識し、組織全体の在り方を改めて考えるようになり、組織一丸となった再生のエネルギーが生まれた。
今回は、運動の第2ステップである「『新生・○○』を考える」を取り上げる。
【組織のあるべき姿の討議】
第2ステップでは、「『新生・○○』を考える」と題して、事件を深く反省した組織が今後どのような組織になるべきかについて、職場で討議し問題意識を共有しようとした。
サブテーマとして、①組織の社会的存在意義は何か、②事業は社会のニーズに応えているか、③生産者や生活者からみて組織は魅力ある存在になっているか、④総合的に見て一番望まれる組織の姿とは何か、を設定した。
抽象性が高いテーマであったことから、日常業務に追われる現場で取り上げるには盛り上がりにくく、現場の推進事務局は苦労した。
しかし、組織の今後を方向付ける重要テーマであることから、筆者は事務局長としてまとめを作成する際に、現場での討議内容に加えて筆者が学会報告や大学院で作成した研究論文[1]の内容を一部盛り込み、単なる意見の集約ではなく組織戦略として実践に役立つ方向を目指した。
第2ステップの討議内容は、下表のとおりである。
表.運動の第2ステップ「組織のあるべき姿」の議論
(チャレンジ「新生・○○」運動NEWNO.2を基に、筆者がまとめた)
テーマ |
討議結果 |
第1ステップの統一テーマ:「新生・○○」を考える |
|
サブテーマ |
職場討議の要約 |
組織の社会的存在意義とは何か |
|
事業は社会のニーズに応えているか |
|
生産者・生活者から見て魅力のある存在か |
|
本稿(ステップ2)は、次回に続く。
[1] 筆者は、青山学院大学大学院の修士論文「組織連合体の環境適合戦略」及び、日本中小企業学会第18回全国大会(1998年10月 神奈川大学)での報告「協同組合組織の環境適合戦略」、日本協同組合学会第19回大会(1999年10月 九州大学)での報告「協同組合組織の環境適合戦略と組織革新」、日本農業市場学会2000年度秋季研究例会(2000年10月 東北大学)での報告「酪農全国連の経営課題と環境適合」で組織の課題と今後の方向を考察し報告している。