◇SH1549◇三菱UFJフィナンシャル・グループ、「クラスター弾への対応」方針変更 松原崇弘(2017/12/14)

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三菱UFJフィナンシャル・グループ、「クラスター弾への対応」方針変更

岩田合同法律事務所

弁護士 松 原 崇 弘

 

 三菱UFJフィナンシャル・グループの株式会社三菱東京UFJ 銀行と三菱UFJ 信託銀行株式会社は、「クラスター弾への対応」に関する方針として、従来、クラスター弾製造を資金使途とする与信を禁止してきたが、2017年12月以降は、資金使途に関わらず、クラスター弾を製造する企業に対する与信を禁止することとした。クラスター弾の製造等を禁止する国内外の法の精神の尊重及びクラスター弾による人道上の重大な懸念を踏まえた対応であり、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から評価されるといえよう。他の金融機関に影響があるほか、ESGのあり方として、国内外の投資を行う事業会社にも参考になる。

 

1 クラスター弾に関する条約(オスロ条約)等

 クラスター弾は、内蔵する子弾を空中で広範囲に散布する設計となった弾丸で非常に殺傷能力が高く、また、広範囲に散布された子弾が不発弾となり、一般市民に甚大な影響を与えてきたことから、人道上の懸念が大きい武器として認識されている。

 日本国は、クラスター弾の使用や製造等を禁止するオスロ条約に2008年12月署名し、同条約は2010年に発効した。オスロ条約は、クラスター弾の使用や製造等の禁止に加え、日本国を含む締約国に貯蔵弾の廃棄や不発弾の除去などを保証することを義務付けるもので、金融機関による融資や企業の投資活動を直接制限するものではない。

 また、クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律が2009年に制定され、同法はクラスター弾の製造や所持を禁止するが、クラスター弾を製造する企業への融資や投資を禁止するものではない。

 もっとも、クラスター弾の製造等の禁止に関する国内外の法令等を踏まえ、全国銀行協会は、2010年10月、クラスター弾の製造を資金使途とする融資を国内外の企業を問わず行わない方針を定めた。

 

2 方針変更の影響

 両銀行は、全国銀行協会の上記方針に沿った対応を採っていたが、クラスター弾を製造する企業に対する与信自体に関しても厳しい意見が存在するところ、このたび、全国銀行協会の上記方針以上に厳格な与信の方針を示した。このような方針変更は、クラスター弾を製造する企業に対し、より厳しい融資姿勢を示す対応であり、クラスター弾の製造等を禁止する国内外の法の精神を尊重し、また、クラスター弾による人道上の重大な懸念に配慮した対応といえる。同方針変更は、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関心を示す投資家らから積極的な評価がなされ、また、全国銀行協会の方針を踏襲する他の金融機関の「クラスター弾への対応」にも影響を及ぼすものと考えられる。

 加えて、金融機関に限らず、企業はさまざまな投資活動を行っており、投資の内容が「クラスター弾への対応」といった社会的な関心事とされる事項に関わる場合、上記銀行による「クラスター弾への対応」の方針変更のように、法規制(行政庁のガイドラインを含む)や関連団体の自主規制以上の対応が必要か、ESGの観点で検討することが望ましい場合もあり得るといえよう。

 以上を踏まえると、投資家の自社に対する評価軸のひとつとして、融資・投資先の事業内容が、ESGの観点からいかなる評価がなされるのかを個別に検討、再評価することも一考であろう。

 

対照表(クラスター弾への対応方針のうち変更があった箇所)
変更前 変更後

全国銀行協会の正会員である三菱東京 UFJ 銀行と三菱UFJ 信託銀行は、クレジットポリシーや融資採り上げ時のチェックシートにおいて、クラスター弾製造を資金使途とする与信の禁止を明記することにより、手続きの遵守を徹底しています。

全国銀行協会の正会員である三菱東京UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行は、クラスター弾製造を資金使途とする与信を禁止してきましたが、クラスター弾の非人道性を踏まえ、2017年12月以降、資金使途に関わらず、クラスター弾を製造する企業に対する与信を禁止しています。

 

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