経産省、「コーポレート・ガバナンス・システム (CGS) 研究会」(第2期) を開催
岩田合同法律事務所
弁護士 冨 田 雄 介
本年12月6日、経産省は、「コーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会」(第2期)(以下「本研究会」という。)を立ち上げることを公表した。
経産省は昨年7月に第1期のコーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会を立ち上げ、同研究会の議論をもとに、本年3月、「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)を策定しているが、本研究会はこれに続く第2期のCGS研究会となる。
CGSガイドラインは、平成27年に策定されたコーポレートガバナンス・コードにより示された主要な原則を企業が実践するに当たって考えるべき内容を示すことでコーポレートガバナンス・コードを補完するとともに、「稼ぐ力」を強化するために有意義と考えられる行動を取りまとめたものである。具体的には、CGSガイドラインでは、各企業の検討すべき事項として、①形骸化した取締役会の経営機能・監督機能の強化、②社外取締役は数合わせでなく、経営経験等の特性を重視すること、③役員人事プロセスの客観性向上とシステム化、及び④CEOのリーダーシップ強化のための環境整備が挙げられている。
そして、本年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」において、「形式」から「実質」へのコーポレート・ガバナンスという観点から、CGSガイドラインの普及・周知を進めるとともに、指名・報酬委員会の活用状況等について分析・公表することとされたことから、第2期研究会では、CGSガイドラインを踏まえた企業の取組状況のフォローアップを行い(具体的には東証1部・2部の上場企業2,500社程度を対象にアンケート調査を行うことなどが予定されている。)、結果を公表することが予定されている。さらに、調査結果を踏まえ、コーポレート・ガバナンスの実効性向上のための課題と対応策を検討し、必要に応じてCGSガイドラインの見直しも検討することとされている。
また、第1期のCGS研究会は、基本的には取締役会など法人単位の仕組みを前提に議論がなされたが、実務上は、多くの上場企業ではグループ単位で経営が行われているのが通常である(例えば、平成28年度の上場企業の連結子会社数は、平均で23社程度、中央値で10社とされている。)。さらに、近年では、海外子会社を含めた子会社の不祥事が親会社の経営に影響を与える事案が散見される。
そこで、本研究会では、①子会社を含めたグループ経営において「守り」と「攻め」両面でいかにガバナンスを働かせるか、②グループ全体の事業ポートフォリオの最適化をいかに機動的に行うかという観点から、グループガバナンスの在り方について、ベストプラクティスの検討を行うことが予定されている。
本研究会は、平成31年3月頃を目途に報告書を取りまとめる予定とされており、併せてCGSガイドラインの見直しがなされる可能性もある。
仮に当該報告書が公表され、CGSガイドラインが見直されたとしても、その提言は各企業に対して強制力を有するものではなく、各企業がこれを実施するか否かはあくまでも各企業の判断に委ねられることになる。もっとも、その内容はコーポレート・ガバナンスの指針や各企業の取組例を示すものとして、実務上も参考となると思われるため、今後、本研究会の動向に注意する必要がある。
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以 上