◇SH1689◇債権法改正後の民法の未来12 不安の抗弁権(1) 中西敏彰(2018/03/07)

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債権法改正後の民法の未来 12
不安の抗弁権(1)

北浜法律事務所・外国法共同事業

弁護士 中 西 敏 彰

 

Ⅰ 最終の提案内容

 法制審での最後の検討の際には、不安の抗弁権の明文化について、以下のとおり、抽象的な要件で明文化する方向性が検討されたが(第87回 部会資料77B・17頁以下)、コンセンサス形成が困難であるとして、明文化は見送られた(第92回 部会資料80-3・32頁)。

 「不安の抗弁権について、これを明文化すべきであるとの立場から、抽象的な要件で明文化を検討するべきであるとの指摘があるが、どのように考えるべきか。

 例えば、『反対債務につき履行を得られないおそれがあると信ずるに足りる相当な理由がある場合において、先履行を求めることが契約の趣旨に照らして衡平に反するとき』に、履行の拒絶が可能となる旨を規定するとの指摘があるが、どのように考えるべきか。」

 

Ⅱ 提案がされた背景(立法事実)

 現行法には不安の抗弁権についての一般的規定はなく、これを肯定した最高裁判例も見当たらない。しかし、下級審裁判例には信義則等を根拠にこれを肯定したものが多数あり(知財高判平成19・4・5裁判所HP、東京地判平成2・12・20判時1389号79頁、東京高判昭和62・3・30判時1236号75頁、東京地判昭和58・3・3判時1087号101頁)、裁判実務においてもその考え方が広く定着していると考えられる。また、多くの学説も、当該法理を認めており、比較法的にも不安の抗弁権の規定が多く見られる(ドイツ民法、スイス債務法、フランス民法、アメリカ統一商事法典、韓国民法、中国契約法など)。

 そこで、わかりやすい民法、取引ルールの透明性を高めるという観点などから、不安の抗弁権の明文化が検討された。

 

Ⅲ 議論の経過

1 経過一覧

法制審議会における審議の状況は、以下のとおりである。

会議等

開催日等

資料

第19回

H22.11.30開催

部会資料19-1,19-2(詳細版)

第24回

H23.2.22開催

部会資料24

中間的な論点整理

H23.4.12決定

中間的な論点整理の補足説明

部会資料33-7(中間的な論点整理に対して寄せられた意見の概要(各論6))

第60回

H24.10.23開催

部会資料48

中井委員メモ

第69回

H25.2.12開催

部会資料57

第71回

H25.2.26開催

部会資料59

中間試案

H25.2.26決定

中間試案(概要付き)

第80回

H25.11.19開催

部会資料71-5(中間試案に対して寄せられた意見の概要(各論4))

第81回

H25.12.10開催

部会資料72B

大阪弁護士会有志意見

第87回

H26.4.22開催

部会資料77B

第92回

H26.6.24開催

部会資料80-3

 

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