◇SH1692◇法務省、「株式会社の不正使用防止のための公証人の活用に関する研究会」の議論のとりまとめを公表(2018/03/08)

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法務省、「株式会社の不正使用防止のための公証人の活用に関する研究会」の議論のとりまとめを公表

--公証人による定款認証手続において会社の実質的支配者等の申告を求める--

 

 法務省は2月27日、「株式会社の不正使用防止のための公証人の活用に関する研究会」(座長=岩原紳作・早稲田大学大学院教授)の議論のとりまとめを公表した。

 法務省によると、「我が国においては、取引主体が株式会社であることにより取引相手等に対する信用が高まることが多いが、その信用が悪用され、消費者詐欺犯罪、詐欺的投資勧誘や資金洗浄等の犯行ツールとして、株式会社が本来の行為者の隠れ蓑として使用されることが少なくない」とされ、「株式会社の実質的支配者を把握し、株式会社の不正使用を防止するための取組を行うことは、これらの被害防止に資する」ものとされる。

 また、「国際的にも、法人の実質的支配者を把握し、法人の不正使用を防止するための取組を行うことは、特に資金洗浄・テロ資金対策の観点から必要性」が高まり、「我が国については、2019年から2020年にかけて、FATF(金融活動作業部会)第4次対日相互審査が実施予定」で、「その審査項目の一つである、法人の実質的支配者情報の把握及びその情報への権限ある当局によるアクセスの確保について、積極的な取組が期待されている」ところである。

 なお、「FATFでは、法人の実質的支配者を効果的に把握し、その情報に当局がアクセスするための方策について研究が進められているところ、公証人が会社の設立手続に関与する法制において、実質的支配者把握のために公証人が果たし得る役割に注目が集まっている」とされる。

 以上の背景を踏まえ、「株式会社の設立に公証人が関与する法制度を有する我が国において、株式会社の不正使用防止のための公証人の活用について検討を行うことは有益である」として、商法・民法の学者、弁護士、司法書士の有識者による本研究会が法務省民事局長によって立ち上げられ、財務省・消費者庁からオブザーバー参加を得て会合が行われ、今般、「とりまとめ」を公表したものである。

 

 「とりまとめ」は、

  1. ○ 定款認証手続における嘱託人による会社の実質的支配者等の申告及びその内容の認証文への記載
  2. ○ 会社の実質的支配者等の申告に関する情報のデータベースの構築

等を提案するものとなっている。

 

 以下、その概要を紹介する。

 

1 定款認証手続における嘱託人による会社の実質的支配者等の申告及びその内容の認証文への記載について

 「とりまとめ」では、方策の第1として、「定款認証手続における嘱託人による会社の実質的支配者等の申告及びその内容の認証文への記載」を挙げ、公証人法施行規則に以下のような規定を設けることを提案している。

・ 公証人は、定款認証手続において、嘱託人に対し、次の申告を求め、その内容を認証文に記載する。

  1. ① 会社の実質的支配者となる者の申告
  2. ② 当該実質的支配者が反社会的勢力(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条6号に規定する「暴力団員」等)に該当しないことの申告

・ 嘱託人が会社の実質的支配者等の申告を正当な理由なく拒んだ場合には、公証人は、定款認証の嘱託を拒否する。

 

 ここでいう「会社の実質的支配者」の意義については、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則11条2項の下記の規定に拠るべきであるとしている。

  1. ① 議決権の総数の25%を超える議決権を直接又は間接に有している自然人(過半数の議決権を直接又は間接に有している自然人がある場合においてはその者)
  2. ② ①に該当する者がいない場合においては、出資、融資等を通じて事業活動に支配的な影響力を有する自然人
  3. ③ ①、②に該当する者がいない場合においては、当該法人を代表し、その業務を執行する自然人

 「会社の実質的支配者等の申告内容についての確認」に関しては、まず、「会社の実質的支配者の本人確認」について、以下のように提案している。

・定款認証の嘱託の内容が、一定のリスク指標(経験則上、類型的に実質的支配者の実在性や属性について虚偽の申告がされている可能性を窺わせるといえるような事情)に該当する場合には、公証人は、公証人法施行規則における規定に基づき、申告された実質的支配者の本人確認を行う。

・リスク指標としては、外国での取組を参考にすると、例えば、実質的支配者の住所がFATFのハイリスク国に指定されている外国であるというような指標が考えられる。

 次に、「申告された実質的支配者が反社会的勢力に属するか否かの裏付調査」については、「申告された実質的支配者が反社会的勢力に該当しないことの申告に関して、第一次的に公証人が収集した情報に基づき該当するか否かの判断を行った上で、該当するとの判断がされた場合に、警察との連携が可能であれば、第二次的に警察に照会する仕組みを構築する」ことを提案している。

 

2 会社の実質的支配者等の申告に関する情報のデータベースの構築について

 「とりまとめ」は、方策の第2として、次のように「会社の実質的支配者等の申告に関する情報のデータベースの構築」を提案している。

・電子定款認証について既に構築されている電子公証システムを利用して、公証人が、設立される会社の実質的支配者等の申告に関する情報をデータベース化。

・刑事訴訟法197条2項に基づく捜査関係事項照会などの、警察等の公的機関による法令に基づく照会があった場合に、当該データを効率的に提供。

 

3 上記の方策により期待される効果

 「とりまとめ」は、これらの方策の実施により、次のような効果が期待できるとしている。

  1. ① 株式会社の不正使用の防止及び暴力団排除
  2. ・ 設立時に会社の実質的支配者を把握することは、設立後の、金融機関等による資金洗浄・テロ資金への関与の有無の確認や、捜査機関による捜査の端緒となるものであり、株式会社が、本来の行為者の隠れ蓑として、消費者詐欺犯罪、詐欺的投資勧誘や資金洗浄等の犯行ツールとして使用されることを防止する効果。
  3. ・ 会社の実質的支配者について、反社会的勢力等への該当性を確認することにより、株式会社が不正使用され暴力団等の資金源となることを防止。
     
  4. ② FATF等による日本の株式会社の透明性に関する国際的な評価向上
  5. ・ FATFの審査項目の一つである勧告24は、権限ある当局が、法人の実質的所有者について正確かつ時宜を得た情報を入手することができ、またそのような情報にアクセスできることを確保すべきとしており、この履行状況については、法令整備等の状況及び有効性(当局等による勧告の履行状況)の観点から審査される。
  6. ・ 日本については、2019年から2020年にかけて第4次審査が実施予定。研究会のとりまとめた方策は、設立時の会社の実質的支配者の適正な把握を制度的に可能にするとともに、データベースの構築により権限ある当局のアクセスを可能にするものであり、この制度は、法務大臣の監督に服する公証人により、確実に実行することができ、FATFの評価を向上させられる。

 

  1. 法務省、「株式会社の不正使用防止のための公証人の活用に関する研究会」の議論のとりまとめ(2月27日)
    http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00050.html
  2. ○ 議論のとりまとめ
    http://www.moj.go.jp/content/001251457.pdf
  3. ○ 議論のとりまとめ概要
    http://www.moj.go.jp/content/001251458.pdf
  4. ○ Proposals to Develop Role of Notaries to Prevent Misuse of Companies in Japan(議論のとりまとめ英文概要)
    http://www.moj.go.jp/content/001251459.pdf
  5. ○ 株式会社の不正使用防止のための公証人の活用に関する研究会参加有識者名簿
    http://www.moj.go.jp/content/001251495.pdf
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