◇SH1739◇金融庁、東証、「コーポレートガバナンス・コードの改訂と投資家と企業の対話ガイドラインの策定について」 村上雅哉(2018/04/03)

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金融庁、東証、「コーポレートガバナンス・コードの改訂と投資家と企業の対話ガイドラインの策定について」

岩田合同法律事務所

弁護士 村 上 雅 哉

 

 金融庁及び東証は、平成30年3月26日、コーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という。)の改訂案と「投資家と企業の対話ガイドライン」(以下「本ガイドライン」という。)の案をそれぞれ公表した。これらはいずれも、金融庁及び東証が共同事務局を務める「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下「フォローアップ会議」という。)による提言を踏まえて策定されたものであり、4月下旬までの期間を定めてパブリックコメントに付されている。本稿ではこのうち、今回初めて策定された本ガイドラインの案について、その概略を述べる。

 本ガイドラインは、スチュワードシップ・コード及びCGコードが求める持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けた機関投資家と企業との対話において、重点的に議論することが期待される事項をまとめたものであり、CGコードで求められる内容を各企業が実施するか否かや、実施しない場合の理由について、より踏み込んだ形で対話がなされるよう促すものである。例えば、CGコード改訂案の原則4‐11が「取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである」と規定するのに対し、これに関連する本ガイドラインの3‐6は端的に「取締役として女性が選任されているか」を挙げている。

 本ガイドライン案の趣旨は、現状、多くの企業で、投資家と企業との対話が依然として形式的なものにとどまり、企業に「気づき」をもたらす例が限られているという指摘があることを踏まえ、両者間の対話の中で言及されるべき具体的な内容を列挙することによって、各企業におけるCGコードへのコンプライ・オア・エクスプレインの質を高めることにあるとされる。そのため、本ガイドラインの位置づけ自体は、CGコードと異なり、コンプライ・オア・エクスプレインの対象ではなく、あくまで投資家と企業の対話において中心的に触れられるべきテーマを列挙したものであるとされつつも、本ガイドライン上の課題を議論する中で、CGコードにコンプライしているか否かという形式論にとどまらない、より具体的な説明が企業側からなされることが期待されている。

 本ガイドライン制定後の本年6月以降の定時株主総会においては、外国機関投資家はもちろんのこと、一般投資家からも、本ガイドラインが規定する内容を踏まえ、より核心に迫った具体的な質問(例えば、女性役員選任実現に向けた具体的ロードマップを示してほしい、など)が増えることも予想される。各企業は、本ガイドラインが規定する事項について、より具体的で実質的な回答を行えるように備えていく必要があろう。

 

<「投資家と企業の対話ガイドライン(案)」の主な内容>(抜粋引用)

番 号

内 容

1-2

経営陣が、自社の事業のリスクなどを適切に反映した資本コストを的確に把握しているか。その上で、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けて、収益力・資本効率等に関する目標を設定し、資本コストを意識した経営が行われているか。また、こうした目標を設定した理由が分かりやすく説明されているか。中長期的に資本コストに見合うリターンを上げているか。

2-1

保有する資源を効活用し、中長期的に資本コストに見合うリターンを上げる観点から、持続的な成長と中期企業価値の向上に向けた設備投資・研究開発投資・人材投資等が、戦略的・計画的に行われているか。

3-6

取締役会が、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向けて、適切な知識・経験・能力を全体として備え、ジェンダーや国際性の面を含む多様性を十分に確保した形で構成されているか。その際、取締役として女性が選任されているか。

4-2

政策保有に関する方針の開示において、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方を明確化し、そうした方針・考え方に沿って適切な対応がなされているか。

5-1

自社の企業年金が運用(運用機関に対するモニタリングなどのスチュワードシップ活動を含む)の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能発揮できるよう、母体企業として、運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置(外部の専門家採用も含む)などの人事面や運営における取組みを行っているか。また、そうした取組みの内容が分かりやすく開示・説明されているか。

以上

 

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