中企庁が「バーチャル組合総会/理事会開催に関する実務指針」策定へ、
5月7日まで意見募集
――先行して関係省令の改正も意見募集中、5月中旬公布・即日施行となる見込み――
中小企業庁は4月19日、「バーチャル組合総会/理事会開催に関する実務指針」の策定案を公表し、5月7日までの意見募集を開始した。
3月15日に開かれた中小企業政策審議会(会長・三村明夫日本商工会議所会頭)の第32回会合において「中小企業関係組合に係るバーチャル総会について」を議題として審議、本年5月の総会シーズンに向けて省令改正・実務指針策定を進めることとされた。物理的な会議体を設けずにバーチャル空間のみで開催する「バーチャルオンリー型」の総会について、株主総会の開催に関する会社法における整理を踏まえ、また「事業協同組合等の通常総会又は臨時総会(以下「総会」という。)に関し、法律(中小企業等協同組合法)に「場所」に関する規定は存在しないものの、省令(中小企業等協同組合法施行規則)に「場所」に関する規定が存在するため、バーチャルオンリー型総会は開催できない」(当日配付の「資料4 中小企業関係組合に係るバーチャル総会」参照)と解されることに照らし、対応を図るもの。省令を改正して開催可能とするとともに、総会のオンライン開催を促進するため「ハイブリッド型総会を含めたオンライン総会について法解釈を明確化するとともに、実務上の留意点等を整理」するものとして実務指針を策定する。
昨年来のコロナ禍を受け、バーチャルオンリー型総会などを巡っては、一定の株式会社にバーチャルオンリー株主総会を実施できる特例を措置する産業競争力強化法等改正案の今国会提出(SH3487 「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」が閣議決定・国会提出――バーチャルオンリー株主総会の実現の特例、債権譲渡の第三者対抗要件の特例など (2021/02/16)既報)、マンション管理業協会による「ITを活用した総会の実施ガイドライン」の策定などの動きがある。上記・中小企業政策審議会会合では、全国中小企業団体中央会・全国商店街振興組合連合会による具体的な要望も紹介された。
同様の中小企業団体においてバーチャルオンリー型の総会・理事会が開催できるよう、中小企業庁は4月8日、(ア)中小企業等協同組合法施行規則の一部を改正する命令案、(イ)中小企業団体の組織に関する法律施行規則の一部を改正する省令案、(ウ)商店街振興組合法施行規則の一部を改正する省令案を公表し(以上、5月7日まで意見募集)、4月9日には(エ)技術研究組合法施行規則の一部を改正する省令案を公表(5月8日まで意見募集)。今般公表された実務指針の策定案もこれらに合わせるかたちで意見募集期間を5月7日までとし、その対象を(a)中小企業等協同組合法上の事業協同組合・事業協同小組合・信用協同組合・協同組合連合会・企業組合・中小企業団体中央会、(b)中小企業団体の組織に関する法律上の協業組合・商工組合・商工組合連合会、(c)商店街振興組合法上の商店街振興組合・商店街振興組合連合会、(d)技術研究組合法上の技術研究組合とした。成案となった後の本実務指針の公表予定日などは示されていないが、上記(ア)~(エ)についてはいずれも「公布日:令和3年5月中旬(予定)」「施行日:公布日と同じ」と表明されている。
表紙を含めて全体で32ページとなる実務指針案では「はじめに」の前に「1.用語の定義等」を据えた。本指針案における「インターネット等の手段」が「TV会議システム、Web会議システム、電話会議システム等のIT等を活用した情報伝達手段」のことをいうこと、「ハイブリッド型バーチャル組合総会(理事会)」「バーチャルオンリー組合総会(理事会)」それぞれの定義とともに、両者を併せて「バーチャル組合総会(理事会)」と呼ぶことなどが把握できる。
指針案本文の主要な要素は「3.総会」に充当されており、続いて「4.理事会」「5.招集通知等の記載例」を収載している。「3.総会」は(1)基本的考え方、(2)前提となる環境整備、(3)法的・実務的論点――と構成。その(1)では「バーチャル組合総会が濫用的に用いられ、インターネット等の手段を用いて出席することが困難な組合員が総会に出席し議決権・選挙権を行使する機会を奪われるような事態は断じてあってはならない」などと明記したうえで(指針案7ページ参照)、上記(3)の「② 議決権の行使」および「③ 組合員からの質問・緊急議案・動議の取扱い」により、たとえば「バーチャルオンリー型組合総会を開催するにあたっては、インターネット等の手段を用いて出席することが困難な組合員による議決権行使の機会を確保するため、定款において、書面による議決権行使を認めることが求められる」こと(上記②関係・指針案11ページ参照)、また「緊急議案の提案を制限する場合には、定款変更を行うとともに、招集通知等において事前に周知しておくことが必要である」こと、「ハイブリッド型バーチャル組合総会においては、緊急議案と同様に動議をリアル出席組合員のみに認めることが許容され得るものの、バーチャルオンリー型組合総会においては、現行のリアル組合総会の実務にならい、議長の裁量によって、出来る限り動議を取り上げることが望ましい」こと(以上、上記③関係・指針案15~16ページ参照)などを説く。最終項目となる「⑦ 定款の変更」では、変更例を新旧対照表の形式で掲げた。
指針案「5.招集通知等の記載例」では(1)通常総会の招集通知に加え、(2)通常総会の議事録、(3)理事会の議事録についても記載上のひな型となる記載例を織り込んでいる。成案の確定・公表に至っていない段階ではあるが、適宜参考としたうえで来るべき総会・理事会に臨みたいところである。