SH4549 Legal as a Service (リーガルリスクマネジメント実装の教科書) 第11回 法務のビジネスジャッジ代行が期せず会社を弱くする 渡部友一郎/東郷伸宏(2023/07/20)

そのほか法務組織運営、法務業界

Legal as a Service (リーガルリスクマネジメント実装の教科書)
第11回 法務のビジネスジャッジ代行が期せず会社を弱くする

Airbnb Japan株式会社
渡 部 友一郎

合同会社ひがしの里・セガサミーホールディングス株式会社
東 郷 伸 宏

 

リーガルリスクマネジメントの教科書 バックナンバー

 

©弁護士・グラフィックレコーダー 田中暖子 2023 [URL]

 

1 共通の悩みの特定

 しばしば、法律事務所から企業の法務部門に転職した若手弁護士が、法務部門の中で働く喜びの一つとして「ビジネスジャッジができることです」と話している場面に接します。より正確には、法律事務所の業務と対比した場合、ピュアな法律上のアドバイスにとどまらず、事業に関してもアイデアや意見を求められる結果、法務が一緒に事業を作り上げているという独特の充実感があることを意味しているものと思われます。弁護士に限らず、私たち法務の人間のやりがいのひとつには、自分が法律情報を吐き出す技術的人材にとどまらず、一緒に悩み、事業を可能ならしめている「同僚」として貢献できる喜びがあるのだと思います。

 今回取り上げる共通の悩みは、もしかしたら少なくない方にとって、現時点では「盲点」である可能性があります。

 しかし、共通している前段階の事象として、法務は、しばしば、事業部門から次のように依頼されます。

 

「どうしてよいか判断がつかないので決めてください。」

「うち(事業部)は、法務部の意思決定に従います。」

「〇〇さんならこのリスクについてどう思われますか。」

 

 これらは、本来、事業部門が最終的な意思決定の権限および責任を負う事柄に関して、すなわち、リーガルリスクのリスクテイクに関するビジネスジャッジについて法務部門の代行(代わりの意思決定)を求めるお願いです。フェアに考えれば、事業部門としても答えを持ち合わせていないため、法律の専門家である法務に対して、意見(法的情報と同様に助言)を求めているとも言えると思います。


この記事はプレミアム向け有料記事です
ログインしてご覧ください




(わたなべ・ゆういちろう)

鳥取県鳥取市出身。2008年東京大学法科大学院修了。2009年弁護士登録。現在、米国サンフランシスコに本社を有するAirbnb(エアビーアンドビー)のLead Counsel、日本法務本部長。米国トムソン・ロイター・グループが主催する「ALB Japan Law Award」にて、2018年から2022年まで、5年連続受賞。デジタル臨時行政調査会作業部会「法制事務のデジタル化検討チーム」構成員、経済産業省「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」法務機能強化実装WG委員など。著書に『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)など。

 

(とうごう・のぶひろ)

金融ベンチャー役員を経て、2006年サミー株式会社に入社。以降、総合エンタテインメント企業であるセガサミーグループの法務部門を歴任。上場持株会社、ゲームソフトウェアメーカー、パチンコ・パチスロメーカーのほか、2012年にはフェニックス・シーガイア・リゾート(宮崎県)に赴任。部門の立ち上げから、数十名規模の組織まで、多種多様な法務部門をマネジメント後、2022年には組織と個人の競争力強化を目的とする合同会社ひがしの里を設立。2023年からはセガサミーグループにおける内部監査部門を担当。

 

タイトルとURLをコピーしました