SH4558 Legal as a Service (リーガルリスクマネジメント実装の教科書) 第12回 ルールメイキングとの適度な距離感 渡部友一郎/東郷伸宏(2023/07/24)

そのほか法務組織運営、法務業界

Legal as a Service (リーガルリスクマネジメント実装の教科書)
第12回 ルールメイキングとの適度な距離感

Airbnb Japan株式会社
渡 部 友一郎

合同会社ひがしの里・セガサミーホールディングス株式会社
東 郷 伸 宏

 

リーガルリスクマネジメントの教科書 バックナンバー

 

©弁護士・グラフィックレコーダー 田中暖子 2023 [URL]

 

1 共通の悩みの特定

 今回、一緒に検討したい共通の悩みは「ルールメイキング(ルール形成)」との適度な距離感です。皆様は、ルールメイキングと聞いて、法務の仕事ではないと決めつけたり、逆に、ルールメイキングは必ず法務の仕事だ、と思い込んだりしていないでしょうか。

 昨今、経済産業省を中心として、日本企業のルールメイキングに関してさまざまな政策が提案され、実行されています。

 たとえば、この連載で取り上げてきた「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会 報告書」に登場する3つの法務機能(ガーディアン機能・クリエーション機能・ナビゲーション機能)のとりわけクリエーション機能において、法務部門が、ルールメイキングの役割を支援することが期待されているように読めます。また、経済産業省は、2022年5月に「新市場創出サービス(ルール形成支援産業)」の調査報告書を公表しています。

 法務担当者の方から、書籍・法律雑誌・SNSにおいて、ルールメイキングが(やや華々しく)テーマとして取り上げられるのを見かける度に、小さな不安感や違和感を抱くとの声を頂戴したことがあります。

 そこで、今回は、リーガルリスクマネジメントの観点から、ルールメイキングとは何かということを改めて明らかにした上で、企業の業種・目標・関連官庁および法令・法務部の位置付けなど諸般の事情によって、ルールメイキングとの適切な距離は自ずから異なっているということを明らかにしたいと思います。

 

2 共通の悩みの分析

 はじめに、距離感を検討する上で、そもそもルールメイキングとはどのようなものなのでしょうか。今一度振り返ってみましょう。

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(わたなべ・ゆういちろう)

鳥取県鳥取市出身。2008年東京大学法科大学院修了。2009年弁護士登録。現在、米国サンフランシスコに本社を有するAirbnb(エアビーアンドビー)のLead Counsel、日本法務本部長。米国トムソン・ロイター・グループが主催する「ALB Japan Law Award」にて、2018年から2022年まで、5年連続受賞。デジタル臨時行政調査会作業部会「法制事務のデジタル化検討チーム」構成員、経済産業省「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」法務機能強化実装WG委員など。著書に『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)など。

 

(とうごう・のぶひろ)

金融ベンチャー役員を経て、2006年サミー株式会社に入社。以降、総合エンタテインメント企業であるセガサミーグループの法務部門を歴任。上場持株会社、ゲームソフトウェアメーカー、パチンコ・パチスロメーカーのほか、2012年にはフェニックス・シーガイア・リゾート(宮崎県)に赴任。部門の立ち上げから、数十名規模の組織まで、多種多様な法務部門をマネジメント後、2022年には組織と個人の競争力強化を目的とする合同会社ひがしの里を設立。2023年からはセガサミーグループにおける内部監査部門を担当。

 

 

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