SH4497 中国:個人情報越境移転標準契約の留意点(下)――中国版SCCの正式公表―― 川合正倫/艾蘇(2023/06/16)

取引法務個人情報保護法

中国:個人情報越境移転標準契約の留意点(下)
――中国版SCCの正式公表――

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

外国法弁護士 艾     蘇

(承前)

3 標準契約の主な内容

⑴ 標準契約の厳格な遵守

 意見募集稿では標準契約の利用方法について特段言及がなかったが、本弁法は、標準契約を利用する際、その内容に厳格に従うべきである旨を明確化しており、標準契約に抵触しない範囲においてのみ、実情を踏まえて追加的内容を定めることができるとされた(本弁法6条1項、2項)。加えて、標準契約は契約当事者の特約事項を別紙の内容としているため、契約当事者は標準契約の本文を変更する余地が少ないと考えられる。同規定に鑑みると、多国籍のグループ企業にとって中国を含む複数国の個人情報保護に係る法規制に対応できる共通的な標準契約を利用することは難しいことになる。

 また、本弁法は主管当局による標準契約のフォーマットの内容変更も可能としているため、個人情報取扱者及び域外受領者は、今後の法令改正や標準契約の改訂の動向を継続的に注視していく必要がある。

 さらに、個人情報取扱者と域外受領者が標準契約を締結した場合、標準契約は両当事者間で既に締結されている他の一切の法律文書に優先して適用されるものとされている(標準契約9条1項)ことから、個人情報取扱者は標準契約の内容を踏まえ、契約当事者間における既存の取決めが標準契約と矛盾していないか、又は、標準契約の履行を妨げる内容がないかの点検も必要となる。

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(かわい・まさのり)

長島・大野・常松法律事務所上海オフィス一般代表。2011年中国上海に赴任し、2012年から2014年9月まで中倫律師事務所上海オフィスに勤務。上海赴任前は、主にM&A、株主総会等のコーポレート業務に従事。上海においては、分野を問わず日系企業に関連する法律業務を広く取り扱っている。クライアントが真に求めているアドバイスを提供することが信条。

 

(Su・Ai)

2017年九州大学法学部交換留学。2018年華東政法大学法学部及び日本語学部卒業。2022年東京大学大学院法学政治学研究科卒業、長島・大野・常松法律事務所入所。日中間の法律業務を中心に、クロースボーダー取引、企業再編、紛争解決等、幅広い分野で法務サポートを行っている。

(※中国での律師登録は行っていません。)

 

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ、ジャカルタ及び上海に拠点を構えています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

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