日EU経済連携協定「データの自由な流通」交渉の大筋合意
岩田合同法律事務所
弁護士 岡 村 優
1 交渉の経過及び背景
⑴ 交渉の経過
2019年2月に発効した日EU経済連携協定(以下「日EU・EPA」という。)の「第8・81条 データの自由な流通」は、「両締約国は、この協定の効力発生の日から3年以内に、データの自由な流通に関する規定をこの協定に含めることの必要性について再評価する。」と定めており[1]、同条に基づいて、2022年10月24日、ブリュッセルで日本とEUの間の正式交渉が開始された[2][3]。
⑵ 交渉の背景
① データ・エコノミーの成長
EUでは、データ・エコノミーが急速に進展し、2019年時点でGDPの2.6%を占めていたが、2025年までに約3倍となり、GDPの5.8%に達すると予測されている。日本でも、データ・エコノミーは、2019年時点でGDPの1.2%を占めている[4]。また、EUは、金融機関による国際取引、メーカー、運送業者及び物流業者による機械や輸送手段の追跡、消費者による飛行機や宿泊施設のオンライン予約及びエンターテイメント配信へのアクセスを例にあげ、個人から大企業まで全ての者が国際的なデータ移転に依存していると指摘している[5]。
② データ・ローカライゼーションの問題
一方、各国では、国境を越えたデータ移転を制限するデータ・ローカライゼーションの導入が進んでいる。総務省の企業向け国際アンケートでは、データ・ローカライゼ―ションに対して、日本企業を含め各国とも半数以上が「不安視している」と回答している。
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(おかむら・ゆう)
岩田合同法律事務所弁護士。2006年東京大学法科大学院修了。2009年弁護士登録。2018年カリフォルニア大学バークレー校(LL.M.)修了。コンプライアンス、独占禁止法、M&A、国際取引等を中心に企業法務全般を取り扱う。
岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/
<事務所概要>
1902 年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
<連絡先>
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外務省・経産省、日EU・EPAに「データの自由な流通に関する規定」を含めることに関する交渉の大筋合意
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_009822.html
○概要
https://www.meti.go.jp/press/2023/10/20231028004/20231028004-1.pdf
○欧州委、国境を越えたデータフローに関する画期的な合意
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_23_5378