SH4731 連合、「勤務時間外の業務上の連絡」に関する実態・意識など調査結果を発表 ――回答者の7割に勤務時間外の社内連絡、職場におけるルール設定は2~3割にとどまる――(2023/12/13)

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連合、「勤務時間外の業務上の連絡」に関する実態・意識など調査結果を発表
――回答者の7割に勤務時間外の社内連絡、職場におけるルール設定は2~3割にとどまる――

 

 日本労働組合総連合会(連合)は12月7日、「勤務時間外の業務上の連絡」にかかる実態・意識などに関する調査結果を発表した。職場におけるルール設定の状況、このような連絡を拒否できる権利への意識に関しても取りまとめている。

 調査結果は表題を「“つながらない権利”に関する調査2023」とし、連合ウェブサイト「ニュース・インフォメーション」>「世論調査」に掲載されている。連合がインターネットリサーチにより折々に集計・分析する実態調査の一環として発表されており、たとえば本年9月14日には「仕事と育児の両立支援制度に関する意識・実態調査2023」が、1月23日には「フリーランスの契約に関する調査2023」が公開された。

 本調査についてもおおむね同様の手法を踏襲しており、インターネットリサーチにより今年9月13日~20日の8日間実施し、18歳~59歳の有職者1,000名の有効サンプルが集計された。男女の内訳は同数。左記「有職者」は「正社員・正職員、派遣社員・派遣職員、契約社員・嘱託職員・臨時職員、パート、アルバイト、フリーランス」を示すものとされ、うち雇用されている者(正社員・正職員、派遣社員・派遣職員、契約社員・嘱託職員・臨時職員、パート、アルバイト。以下、本調査結果および労働統計に合わせて「雇用者」という)は942名である。差引き58名がフリーランスとみられ、ほか公表資料によれば、雇用者942名の内訳は正規雇用者:703名、非正規雇用者:239名となっている。

 本調査結果では「勤務時間外の業務上の連絡」の有無、当該連絡に対する意識、職場において実態把握やルール設定がなされているか、「勤務時間外(休日、休暇日含む)に、仕事上のメールや電話への対応を労働者が拒否することのできる権利」とされる“つながらない権利”に対する意識などにつき、大別して(A)勤務時間外の業務上の連絡の有無について、(B)勤務時間外の業務上の連絡に関する意識について、(C)勤務時間外の連絡に関する職場のルールについて、(D)“つながらない権利”について――の4つのパートにより整理・構成した。

 (A)では、まず業務で使用する「スマートフォン」「PCメール」「メッセージアプリ」「Web会議システム」「固定電話」「チャット」といった各ツールの使用状況について分析(複数回答可。全回答者1,000名中、スマートフォンが59.3%ともっとも高い)。続いて「取引先にプライベートな連絡先(会社の電話番号・会社のメールアドレス以外の連絡先)を教えているか」について掲げ、全回答者につき「教えている:28.4%、教えていない:71.6%」の状況が示されている。

 そのうえで、「勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくることがある」とする回答について解説。雇用者942名中、72.4%(推計682名)にのぼることが判明した。本解説においては当該連絡の頻度、雇用形態別、業種別の分析がなされているほか、当該連絡が「コロナ禍前:64.2% → 現在:72.4%」と8.2ポイントの上昇を示したとしている。

 上記(B)ではこのような連絡に対する意識を整理し、雇用者942名について「部下・同僚・上司からの勤務時間外の連絡は許容できない:15.1%(推計142名)」である一方、「すぐに対応が必要なことに関する連絡は許容できる:48.5%(複数回答可。推計457名)」などの意識が一定数にのぼることも分かった。なお、フリーランスを含む全回答者ベースでは「取引先からの勤務時間外の連絡(業務上の連絡)は許容できない:28.1%(281名)」となる。本調査結果ではこれらに続き、当該連絡を受けたことにより感じるストレスの状況を詳らかにしている。

 (C)により、まず職場における実態把握の状況をみると、雇用者942名について「自身の職場では“勤務時間外の業務上の連絡”について調査等の実態把握が行われたことがある:20.5%(推計193名)」となった。本調査結果における分析によれば、職場における実態把握の現状として、業種別、テレワークの可否別、労働組合の有無別により、実態把握が行われたことがあるとする回答者の割合には相当程度の差異があることが分かる。

 公式・非公式を問わずにルール設定の状況を聞いたところでは「自身の職場では“勤務時間外の職場内の連絡(業務上の連絡)”についてルールがある:25.8%(推計243名)」「ない:46.3%(推計436名)」であった。一方「わからない:27.9%(推計263名)」が一定数生じている。

 これらの数値は、同じく雇用者942名に対する「勤務時間外の取引先との連絡(業務上の連絡)」に目を転じた場合、「ある:19.9%(推計187名)」「ない:45.8%(推計431名)」とそれぞれ減少し、「わからない:34.4%(推計324名)」が増加する。「勤務時間外の取引先との連絡(業務上の連絡)」について、さらにテレワークの可否別にみると、テレワークが可能な484名に対して「ある:30.2%(146名)」と、また労働組合の有無別にみると、労働組合があるとする428名に対して「ある:29.7%(127名)」と、それぞれ顕著な増加を示す。

 (D)の“つながらない権利”については、本調査結果の解説によると「日本ではつながらない権利は法制化されていませんが、勤務時間外のメール等への対応が労働者の負担になるとして、禁止する企業も出てきました」とされている。全回答者1,000名を対象とする「“つながらない権利”によって勤務時間外の連絡を拒否できるのであれば、そうしたいと思うか」との問いに対しては「非常にそう思う:29.2%(292名)」「ややそう思う:43.4%(434名)」となり、合計72.6%(726名)の回答者が本権利の行使に積極的であることが分かった。

 ただし(i)「“つながらない権利”があっても、今の職場では勤務時間外の連絡の拒否は難しいと思うか」について「非常にそう思う:19.8%(198名)」「ややそう思う:42.6%(426名)」とする回答が合わせて6割超にのぼっており、また(ii)「“つながらない権利”によって勤務時間外の連絡を拒否する人が職場で増えれば、拒否しやすくなると思うか」について「非常にそう思う:28.0%(280名)」「ややそう思う:45.6%(456名)」との回答が計7割超となるなど、いわば職場全体の雰囲気を協調的に窺う姿勢がみられるものと考えられる。

 “つながらない権利”については本調査結果の末尾において、法制化される場合の雇用者の意識も仔細に明らかにされている。適宜参考とされたい。

 


連合、「“つながらない権利”に関する調査2023」
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20231207.pdf

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