米SEC、米国内上場企業を対象に気候変動リスクや
温室効果ガス排出量の開示を義務付ける規則を導入
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 宮 川 賢 司
弁護士 香 川 遼太郎
弁護士 藏 野 舞
1 はじめに
2024年3月6日、米国証券取引委員会(“Securities and Exchange Commission”、以下「SEC」という。)は、米国内上場企業による気候関連の情報開示を強化、標準化するための規則(以下「本規則」という。)を採択した。本規則案は2022年3月に提案され、24,000以上のパブリックコメントを経て同日、SECにおいて最終規則として承認されたものである。
本規則は、気候関連のリスクが企業に及ぼす財務的影響等について、一貫性、比較可能性、信頼性のある情報開示を確立するという投資家のニーズに応え、気候関連開示についてTCFDと同様に一定の枠組みを与えるものといえる。一方で、企業側の意見をふまえ、本規則の一部は規則案より縮小される形で採択されている。
以下、本規則の内容について、必要に応じて日本における金融商品取引法上の開示規制および国際サステナビリティ基準審議会(International Sustainability Standards Board(ISSB))の基準と比較しつつ、解説する。
2 適用範囲
本規則は、基本的に米国内上場企業に適用される。したがって、関連会社を含めて米国内に上場していない日本企業への影響は限定的であるといえるが、日本を含む世界の気候変動関連開示義務の流れを理解する上では本規則の内容を把握することは有益であるといえる。
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(みやがわ けんじ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャル・カウンセル弁護士。1997年慶應義塾大学法学部卒業。2000年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2004年ロンドン大学(University College London)ロースクール(LLM)修了。2019年から慶應義塾大学非常勤講師(Legal Presentation and Negotiation)。国内外の金融取引、不動産取引、気候変動関連法務および電子署名等のデジタルトランスフォーメーション関連法務を専門とする。
(かがわ・りょうたろう)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。早稲田大学法学部卒業。2022年弁護士登録(東京弁護士会)。執筆として「非化石証書の制度と実務」NBL1253号(2023)等。
(くらの・まい)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2018年国際基督教大学教養学部卒業。2021年一橋大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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