SH4747 個人情報委、「民間企業における個人データの越境移転、海外法規制対応に関する実態調査 調査結果報告書」を公表 藤並知憲(2023/12/21)

取引法務個人情報保護法

個人情報委、「民間企業における個人データの越境移転、海外法規制対応に関する実態調査 調査結果報告書」を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 藤 並 知 憲

 

1 はじめに

 個人情報保護委員会(以下「個情委」という。)は、2023年12月6日付で、「民間企業における個人データの越境移転、海外法規制対応に関する実態調査 調査結果報告書」を公表した[1][2](以下「本報告書」という。)。個人情報の保護に関する法律(以下「個情法」という。)の令和2年改正[3]では、個人情報取扱事業者に対し、外国にある第三者への個人データの提供に関して本人同意を得る場合に当該外国の個人情報保護制度に関する参考情報の提供義務を課すなど(法28条2項・同施行規則17条2項2号)、個人データの越境移転により厳格な規制を設けた。また、経済活動のグローバル化に伴い、海外の個人情報保護法令が日本企業に直接適用される事態も想定される[4]

 本報告書は、民間企業における個人データの越境移転、海外法規制対応に関する他社の動向等も含めた対応状況等を示す貴重な資料であることから、本報告書のうち、実務上の参考になると思われる箇所を紹介する。

 

2 個人データ等の越境移転の有無

 個人データの越境移転(外国にある第三者への提供に加え、外国において個人データを取り扱う場合を含む。以下同じ。)を行っているかの質問に対しては、回答企業66社のうち、57社(86%)が行っていると回答した(本報告書15頁)。また、その移転元および移転先は、日本から他国への移転が56社(98%)、他国から日本への移転が48社(84%)、他国から他国への移転が31社(64%)であると回答した(本報告書16頁)。かかる調査結果からは、多くの企業において、個人データを国境を越えて取り扱っている実態が窺われる。

 

出典:本報告書16頁

 

 他方で、要配慮個人情報[5]を日本から他国へ移転していると回答した企業は17社(26%)、匿名加工情報[6]を日本から他国へ移転していると回答した企業は3社(5%)、個人関連情報[7]を日本から他国へ移転していると回答した企業は18社(27%)にとどまった(本報告書17~19頁)。要配慮個人情報、匿名加工情報または個人関連情報については、そもそも取扱いを行わないこととしている企業もあることが想定されるが、本調査結果からは、個人データと比較して、これらの越境移転には消極的な姿勢が窺われた。

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(ふじなみ・とものり)

岩田合同法律事務所弁護士。2014年慶應義塾大学大学院法務研究科修了。2015年弁護士登録。ジェネラル・コーポレートを中心に企業法務に従事するほか、商事関係訴訟、商事非訟、民事調停、保全・執行事件等を含めた、幅広い紛争対応業務を取り扱っている。

 

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

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1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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