◇SH2989◇経産省、第1回 Society5.0時代のデジタル・ガバナンス検討会を開催 鈴木智弘(2020/01/30)

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経産省、第1回 Society5.0時代のデジタル・ガバナンス検討会を開催

岩田合同法律事務所

弁護士 鈴 木 智 弘

 

 2020年1月22日に、経済産業省が新たに設置した「Society5.0時代のデジタル・ガバナンス検討会」(以下「本検討会」という。)の第1回が開催された。本稿では、本検討会の設置趣旨や検討内容等について解説する。

 

1 本検討会の設置趣旨

 「Society5.0」という言葉をご存知だろうか。内閣府によれば、「Society5.0」とは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」と定義されている(https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html)。これは、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された。

 

(内閣府HPhttps://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.htmlより)

 

 こうした社会の変化は、企業経営や、企業経営の管理監督のあり方にも大きな変化を求めるものになると考えられている。

 第一の変化は、企業の成長を支配する要素としての「デジタル変革力」の重要性の増大であり、デジタル技術の発展を前提として、新たな価値を生み出すビジネスシステム・ビジネスモデルを構築する能力が必要になると考えられている。

 第二の変化は、デジタル技術の発展による企業経営や、企業経営の管理監督の方法論自体の変化である。既に、企業における会計・人材等のマネジメントなどにAIやビッグデータ分析が用いられる事例が表れ始めているが、こうした動きは今後加速していくものと考えられ、また、いずれは企業活動の真正性を確認する手段も財務監査に代わり、システム・データの監査が重要になってくるとも考えられている。

 本検討会は、こうした社会の変化に伴う企業経営・企業経営の管理監督のあり方の変化を踏まえ、Society5.0時代に向けた企業ガバナンスのあり方について検討をすることを目的として設置された。

 

2 本検討会の検討内容

 本検討会の検討内容は以下のとおりである。

  1. ① 情報処理促進法に基づく指針(デジタルガバナンス・コード)・認定基準及び優良企業選定の方向性
  2. ② デジタルガバナンス・コード、認定制度の運用の方向性
  3. ③ デジタルガバナンス・コードに基づく行動・対話の促進策

    1. ・ リファレンス(ガイドライン等)の整備
    2. ・ 人材
    3. ・ ステークホルダー向けの対策等
  4. ④ デジタル化が進んだ社会におけるコーポレートガバナンスの将来像

 このように、本検討会では、2019年11月に可決成立した情報処理促進法一部改正法案(概要は以下の表のとおり)を踏まえて、主として「デジタルガバナンス・コード」、「法認定基準」及び「有料企業選定にあたっての方向性」を検討することとしている。

 

(経済産業省HP https://www.meti.go.jp/press/2019/10/20191015002/20191015002-1.pdfより)

 

 すなわち、まず企業が経営においてデジタル技術による社会変化への対応を捉え、ステークホルダー(投資家、従業員、取引先、社会、サイバー空間における連携組織等)との対話を基盤として行動していくにあたっての原則(デジタルガバナンス・コード[指針])を策定することとしている。

 そして、指針に沿った行動に踏み出し、ステークホルダーとの対話を通じてデジタル技術による社会変化へ対応していく準備が整った企業を認定する制度(法認定基準)を策定し、加えて、企業間競争をさらに促進する観点から、認定企業の中から指針に沿ってより優れた行動を行う(=より実効的な対話を行っている)企業を選定する制度を今後検討するとされている。

 

(経済産業省HPhttps://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2020/01/001_06_00.pdfより)

 

 デジタルガバナンス・コード案では、「経営陣や取締役会によるガバナンスの確保」として、「企業において、取締役会は、ビジョンの構築や戦略の方向性を示す等に際して、その役割・責務を適切に果たし、また、これらの実現に向けた経営陣の取組を適切に監督するべきである」、「特に、経営陣は、戦略を効果的に実行していくために、事業現場等とも協力し、デジタル技術に係る動向を踏まえた事業者の課題把握を行うとともに、ITシステム・デジタル技術を活用した事業推進の前提となるサイバーセキュリティリスク等に対しても適切に対応していくべきである」とされており、デジタル技術による社会変化・変革に応じた経営陣の取組にも言及されている。

 本検討会は昨今目まぐるしく進化するデジタル技術の発展に伴う企業経営やその管理監督のあり方を検討するものであり、企業経営に少なからず影響を与えるものだと思われる。将来的には優良企業の選定がなされることも検討されており、企業のレピュテーションの観点からもデジタルガバナンス・コードに沿った行動をすることが重要である。

 本検討会は合計3回開催される予定となっており、今後の検討動向を注視する必要がある。次回の本検討会は2月下旬頃に開催される予定である。

以上

 

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