◇SH1467◇JPホールディングス、臨時株主総会における株主提案に関する通知の受領 堀田昂慈(2017/10/31)

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JPホールディングス、臨時株主総会における株主提案に関する通知の受領

岩田合同法律事務所

弁護士 堀 田 昂 慈

 

 子育て支援事業を展開する株式会社JPホールディングス(東証1部 証券コード:2749、以下「JPHD」という。)は、平成29年10月24日、「臨時株主総会における株主提案に関する通知の受領について」と題するプレスリリース(以下「本プレスリリース」という。)を公表した。

 本プレスリリースは、概要、特定の株主からの招集請求を受けて平成29年11月22日に開催を予定している臨時株主総会に関し、当該株主から、同年10月20日付で、議案の一部を取り下げる旨の通知(以下「本通知」という。)を受けたこと、及び、本通知については株主総会の日の8週間前を経過した後の通知であるため法令上有効でないとして、招集請求時の提案を正式な提案として取り扱うことを公表したものである。すなわち、「8週間」要件に着目していることから、JPHDは、本通知を新たな株主提案として取り扱い、株主提案権の行使要件を満たさないと解したものと考えられる。

 本件は、株主による株主総会の招集請求及び株主総会の議題に係る株主提案に関するものであり、株主総会実務上も関心の高い事項であるので、以下では、それぞれの制度について改めて整理する。

 

1 株主による株主総会の招集請求

 総株主の議決権の3パーセント以上の議決権を6か月前(いずれも定款の定めにより引下げ又は短縮可能)から引き続き保有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的事項及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる(会社法297条1項。なお、非公開会社においては6か月の保有期間要件は不要(会社法297条2項)。)。

 そして、請求株主は、①招集請求後遅滞なく招集手続が行われない場合、又は、②請求日から8週間以内の日を会日とする株主総会の招集通知が発せられない場合には、裁判所の許可を得て、自ら株主総会を招集することができるとされている(会社法297条4項)。

 そのため、会社は、株主から招集請求を受け、要件を充足していることを確認した場合には、通常、「8週間以内」に会日を設定して臨時株主総会を招集することとなる。実際に株主総会を開催するに当たっては、通常、取締役会決議や招集通知の作成・発送に期間を要するため、「8週間以内」の開催を実現するため、会社側では迅速な対応が求められる。

 なお、本件では、JPHDは、平成29年9月28日付で株主から株主総会の招集請求を受領後、同年10月17日に取締役会を開催し、同年11月22日に臨時株主総会を開催することを決定している。

 

2 株主総会の議題に係る株主提案

 取締役会設置会社においては、総株主の議決権の1パーセント以上又は300個以上の議決権を6か月前(いずれも定款の定めにより引下げ又は短縮可能)から引き続き保有する株主は、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求できる(会社法303条2項。なお、非公開会社においては6か月の保有期間要件は不要(会社法303条3項)。)。

 ただし、同請求権は、株主総会の日の8週間前(定款の定めにより短縮可能)までに行使する必要があり、これを満たさない請求は不適法となる(会社法303条2項)。

 本件でも、JPHDは、本通知は「8週間」の期間要件を満たさず、有効でないとして取り上げない旨を公表している。

 ただし、本プレスリリースでも言及されているが、株主は、当該株主総会の目的事項に関する限り、株主総会の議場において議案を提出(修正提案)することが可能である。そのため、本件については、株主は、かかる対応により議案を修正することが可能である。

 

 近時、株主が株主総会に積極的に関与する傾向が続いており、株主提案権が行使された例も増加傾向にある(平成25年7月~平成26年6月期の株主総会において株主提案が付議された上場会社は30社であったが、その後、44社(平成26年7月~平成27年6月)、50社(平成27年7月~平成28年6月)、51社(平成28年7月~平成29年6月)と増加している(出典:資料版商事法務366号、378号、390号、402号)。)。

 他方で、株主提案権については、濫用的な権利行使も散見されることから、平成29年2月、法務大臣が法制審議会に会社法改正を諮問するなど、法改正の議論も進められている。

 今後は、実務動向及び法改正の動向の両面について注視しておく必要がある。

 

表 株主総会招集請求権と株主提案権の整理

 

持株要件

保有期間要件

行使期限

備考

株主総会招集請求権

総株主の議決権の3%

(※2)

6か月

(※2、※3)

一定の場合(※4)、裁判所の許可を得て、自ら株主総会を招集可

株主提案権

(※1)

総株主の議決権の1%又は300個

(※2)

6か月

(※2、※3)

株主総会の日の8週間前

当該株主総会の目的事項に関する限り、株主総会の議場において議案提出(修正提案)可

  1. ※1 取締役会非設置会社においては、各要件は不要(会社法303条1項参照)。
  2. ※2 定款の定めにより引下げ又は短縮が可能。
  3. ※3 非公開会社においては、保有期間要件は不要。
  4. ※4 ① 招集請求後遅滞なく招集の手続が行われない場合
     ② 請求のあった日から8週間以内の日を会日とする株主総会の招集通知が発せられない場合

 

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