◇SH0438◇金融庁、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第1回)を開催 柏木健佑(2015/10/05)

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金融庁、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードの
フォローアップ会議(第1回)を開催

岩田合同法律事務所

弁護士 柏 木 健 佑

 金融庁は、9月24日、同日開催された第1回スチュワードシップ・コード(以下「SSコード」)及びコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)のフォローアップ会議(以下「フォローアップ会議」)の議事次第を公表した。フォローアップ会議は、2014年2月に策定されたSSコード及び本年6月に適用が開始されたCGコードの普及・定着状況をフォローアップするとともに、上場企業全体のコーポレートガバナンスの更なる充実に向けて必要な施策を議論・提言することを目的として設置された。フォローアップ会議の座長は、CGコード原案策定時の有識者会議座長であった池尾和人慶應義塾大学教授であり、また、SSコード策定時の有識者検討会座長であった神作裕之東京大学教授もメンバーに加わっており、両コードの策定に関与した有識者らによるその実施状況のフォローアップを意図したものと見られる。

 第1回フォローアップ会議の議事録は現時点では未公表のため、本稿では、各社のCGコードへの対応状況をまとめた配布資料4(以下「対応状況資料」)について紹介する。

 CGコードは、対象会社に、CGコードの各原則を遵守するか、遵守しないのであればその理由を説明することを求めており(コンプライ・オア・エクスプレイン)、不実施の理由の説明は、各社のコーポレート・ガバナンス報告書に反映することとされている。対応状況資料によれば、本年8月末までの開示状況は68社(東証一部及び東証二部)とのことである。そのうち、CGコードの全原則を「実施」(コンプライ)している会社は60.3%(41社)、一部原則について「実施」せずその理由を「説明」(エクスプレイン)している会社は39.7%(25社)である。なお、「説明」率の高い原則を以下にまとめた(5社以上が「説明」とした原則を抽出)が、特に、日本でなじみのない取締役会の実効性に関する分析・評価について「説明」を行う会社が多く、この点について引き続き検討している会社が多いものと思われる。

原則

内容

「説明」率

(会社数)

補充原則

4-11③

取締役会による取締役会の実効性に関する分析・評価、結果の概要の開示

23.5%

(16社)

原則4-8

独立社外取締役の2名以上の選任

14.7%

(10社)

補充原則

1-2④

議決権の電子行使のための環境整備、招集通知の英訳

13.2%

(9社)

原則3-1

(ⅰ) 経営戦略、経営計画等、(ⅱ)ガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針、(ⅲ)取締役等の報酬決定の方針と手続、(ⅳ) 取締役・監査役候補等の指名の方針と手続、(ⅴ)個々の取締役・監査役等の選任・指名、についての説明の情報開示の充実

7.4%

(5社)

補充原則

4-8①

独立社外取締役による客観的立場に基づく情報交換・認識共有

7.4%

(5社)

 

 全体では40%近い会社が一部原則について「実施」していないことになるが、「説明」の内容としては、今後、時期の明示のあるもの・ないものをあわせて「実施」予定とするものが半数近く、また、「実施」するかどうか検討中というものが3分の1程度である。代替手段により目的達成可能であるとの理由、あるいは自社の個別事情といった具体的な理由により「実施」予定はないとして「説明」を行うものは15%程度(16件)と、現状それほど多くはない。

 現段階では、多くの会社が、全ての原則について「実施」済み又は「実施」予定ということであり、コーポレートガバナンスの充実に向けた動きが加速しているとも捉えられるが、CGコードの各原則については、「実施ありき」の考え方に基づくうわべだけの「実施」はむしろCGコードの趣旨に反するとされている。各社の「実施」「説明」の割合にとらわれるのは適切ではなく、今後、「実施」とされている原則についても実質的な対応状況が問われることになると考えられる。フォローアップ会議は当面月1回の頻度で開催が予定されているようであり、実務の対応とともにフォローアップ会議における議論の内容も注視していく必要があるだろう。

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