金融庁、「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び
有価証券報告書レビューの実施について(令和2年度)」を公表
――平成31年1月施行の企業内容等開示府令の一部改正への対応等――
金融庁は3月27日、「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(令和2年度)」を公表した(前年の内容は、後掲の別稿参照)。
その概要は以下のとおりである。
1 有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について
⑴ 新たに適用となる開示制度に係る留意すべき事項
平成31年1月に施行された「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」による改正(「経営方針・経営戦略等」、「事業等のリスク」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」及び「監査の状況」)。
⑵ 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項
- ① 法令改正関係審査
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上記の「企業内容等開示府令」による改正について、記載内容を審査したところ、平成31年3月期から適用されている役員報酬と政策保有株式の開示については、記載の充実が図られているものの、特に政策保有株式の開示については投資家が期待する開示と大きく乖離する例が見られた。
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② 重点テーマ審査
- ア 「関連当事者に関する開示」についての留意事項
- ・ 関連当事者の開示に関する重要性の判断基準を超える取引がある場合には、関連当事者との取引は開示をする必要があること(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第15項、第16項、第17項、第18項)
- ・ 一般の取引と同様であることが明白な取引とは、一般競争入札による取引、預金利息、配当金の受取り、公募増資等をいい、第三者との取引と同等な条件であっても関連当事者との取引に関する開示は省略できないこと(関連当事者の開示に関する会計基準第9項、第28項、第32項)
- ・ 資本取引については、開示対象の取引に含まれること(関連当事者の開示に関する会計基準第28項)
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・ 提出会社の役員等が他の法人の代表者として会社と取引を行うような場合は、関連当事者取引に該当し、関連当事者が法人の場合の取引の判断基準により、開示が必要になる場合があること(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第16項、第33項)
- イ 「ストック・オプション等に関する会計処理及び開示」についての留意事項
- ・ 各会計期間における費用計上額は、ストック・オプションの公正な評価額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額として算定することとされていること(ストック・オプション等に関する会計基準第5項)
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・ 実務対応報告第36号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」の適用日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引について、従来採用していた会計処理を継続する場合には、権利確定条件付き有償新株予約権の概要及びその変動状況並びに採用している会計処理の概要を注記する必要があること(実務対応報告第36号第10項(3))
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ウ 「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引(ESOP)に関する会計処理及び開示」についての留意事項
- (追加情報)
- ・ 取引の概要
- ・ 自己株式として計上された信託に残存する自社の株式について、純資産の部に自己株式として表示している旨、帳簿価額及び株式数
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・ 従業員持株会に信託を通じて自社の株式を交付する取引において、総額法の適用により計上された借入金の帳簿価額
- (1株当たり情報に関する注記)
- ・ 自己株式として計上された信託に残存する自社の株式を控除する自己株式に含めている旨
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・ 期末及び期中平均の自己株式の数
- (連結株主資本等変動計算書又は個別株主資本等変動計算書注記)
- ・ 当期首及び当期末の自己株式数に含まれる信託が保有する自社の株式数
- ・ 当期に増加又は減少した自己株式数に含まれる信託が取得又は売却、交付した自社の株式数
- ・ 配当金の総額に含まれる信託が保有する自社の株式に対する配当金額
2 有価証券報告書レビューの実施について
令和2年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書のレビューについて、以下の内容で実施する。なお、過去の有価証券報告書レビューにおいて、フォローアップが必要と認められた会社についても、別途審査を実施する。
⑴ 法令改正関係審査
平成31年1月に施行された「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」による改正について、記載内容を審査する(「経営方針・経営戦略等」、「事業等のリスク」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」及び「監査の状況」が対象)。
⑵ 重点テーマ審査
- ○ セグメント情報
- 主に「セグメント情報等の開示に関する会計基準(企業会計基準第17号)」及び「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第20号)」の適用状況を審査する(指定国際会計基準を適用する会社に関しては、IFRS8号「事業セグメント」の適用状況を審査する)。
- ○ IFRS15「顧客との契約から生じる収益」
- 主に指定国際会計基準を任意適用する会社を対象に、IFRS15号「顧客との契約から生じる収益」の適用状況を審査する。会計処理や連結財務諸表の表示に加え、注記についても審査対象とする。
⑶ 情報等活用審査
上記に該当しない場合であっても、適時開示や報道、一般投資家等から提供された情報等を勘案して審査を実施する。
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金融庁、有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(令和2年度)(3月27日)
https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200327.html
参考
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SH2427 金融庁、有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施 武藤雄木(2019/03/26)
https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=8523857