GPIF、「第5回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する
上場企業向けアンケート集計結果」を公表
――統合報告書の作成など非財務情報の開示・活用が引き続き進展――
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は5月8日、「第5回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表した。
GPIFでは運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する評価、「目的を持った建設的な対話」(エンゲージメント)の実態、前回アンケート実施以降1年間の変化の把握を目的として上場企業を対象にアンケートを実施している(前回の集計結果について、SH2567「GPIF、「第4回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表(2019/05/29)」既報)。今回は、2019年12月30日時点の東証一部上場企業2,160社(前年2,129社)を対象に2020年1月10日~3月13日の間に実施され、回答社数は662社(回答率30.6%、前回604社・28.4%)であった。「過去最多のご回答を賜」ったという。
アンケートは大別して(1)GPIFの運用受託機関を含む機関投資家のスチュワードシップ活動の現状と変化、(2)自社のIRおよびESG活動、(3)GPIFが選定したESG指数、(4)GPIFのスチュワードシップ活動全般について問うものとなっており、昨年比で顕著な変化を示す質問・回答もみられた。
上記(1)に関して「コーポレート・ガバナンス報告書の機関投資家による活用は進んでいますか?」と尋ねた質問5では「進んでいると感じる」とする回答が今回21.6%にのぼり、前回比4.8ポイント増、前々回比7.2ポイント増と着実な進展がみられるほか、作成企業に対して「統合報告書の機関投資家による活用は進んでいますか?」と尋ねた質問6では「進んでいると感じる」が今回50.0%を占め、前回比10.6ポイント増、前々回比32.5ポイント増と継続して大きな伸びを示している。
上記(2)において自社のESG活動につき、ESGを含む非財務情報をCSR報告書・サステナビリティ報告書・統合報告書などにより任意開示しているかを問う質問4では「行っている」が74.8%にのぼっており(前回比2.4ポイント増)、非財務情報の説明の場としては、①IRミーティングが77.8%(前回比5.8ポイント増)、②決算説明会が51.8%(前回比6.4ポイント増)、③ESG等に特化した説明会が11.2%(前回比2.8ポイント増)。「統合報告書またはそれと同等の目的の機関投資家向け報告書」をすでに作成している会社は53%(350社、前回比58社増・2ポイント増)である(質問7)。
また今回アンケートでは、上記(2)の関連で「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同しているかを新たに尋ねることとしており(質問9)、「賛同している」との回答が144社(22%)から得られた。この144社に対して「TCFDに沿った情報開示をされていますか?」と問うと(質問9-1)、①既開示会社が61社(43%)、②開示していない会社が80社(57%)となっており、②の80社のうち「2020年開示予定」とする会社が50社を数えた。
GPIFでは「統合報告だけでなくTCFDのような新しい情報開示にも企業の皆様が取り組まれ、ESG情報を含む非財務情報の開示の一層の充実と、それを活用する投資家の増加という好循環が起きていることが窺え」るとコメントしており、スチュワードシップ活動やESGの取組みを引き続き進めていくとしている。