◇SH0741◇ベトナム:規制の緩和か強化か? 輸出入取引を行う外資企業についての新政令案 澤山啓伍(2016/07/21)

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ベトナム:規制の緩和か強化か? 輸出入取引を行う外資企業についての新政令案

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 

 ベトナムにおいても日本製品に対する信頼度は高く、日本から輸入された製品を取り扱う販売店は街のあちこちで見かけられるし、日本に一時帰国する際にベトナム人の従業員、友人から日本で特定の製品を買ってきてもらうよう頼まれる駐在員は多い。

 このような状況を見て、日本からの商品の輸入販売をベトナムで行いたいと考える日本企業は多い。また、メーカー等も、ベトナム国外で製造した製品をベトナムの工場や消費者に対して販売するために、販売会社をベトナム国内で設立したいという動きも多い。

 

 現在、日本企業を含む外国投資家が、ベトナム国外からの商品を輸入し、ベトナム国内での卸売又は小売を行う業務(以下「輸入販売業務」という。)を行う現地法人を設立しようとする場合、政令23/2007/ND-CP号による規制が適用される。

 今般、計画投資省及び商工省では、この政令23/2007/ND-CP号を全面改訂し、外資企業による輸入販売業務に関する新しい政令を制定することを目指し、その新政令案を発表し、各国商工会やVBFへの意見照会を行った。

 新政令案において想定されている、現行の規制からの変更点は以下の通りである。

  1. ・ 現行制度では、外国投資家が輸入販売業務を行う現地法人を設立するには、その業務を含めた投資プロジェクトを策定し、それについて投資登録証明書及び企業登録証を取得すればよく、これらとは別のライセンスを取得する必要はなかった。しかし、新政令案では、外資企業は、現地法人設立に際して投資登録証明書及び企業登録証を取得した上で、当該現地法人をして、別のライセンス(以下「貿易ライセンス」という。)を取得させる必要があるとしている。この貿易ライセンスの有効期限は5年間で、更新が可能とされている。
  2. ・ 現行制度では、現地法人を設立する際に取得する投資登録証明書において、輸入販売業務の対象とする商品をHSコードで特定し記載する必要がある。記載がない商品の輸入販売業務を新たに行いたい場合には、投資登録証明書の変更が必要である。新政令案自体には記載はないが、当局の担当者の説明によれば、新たに必要となる貿易ライセンスにおいては、このようなHSコードでの特定はなされず、一度貿易ライセンスを取得すれば、その有効期間中は、一部商品(外資企業による取り扱いが一般的に禁止されている商品)を除き、対象の限定無く輸入販売業務を行うことが可能となるとのことである。
  3. ・ 新政令案では、①ベトナムで自ら製造した製品の輸出及び国内での販売、②投資登録証明書及び企業登録証において規定されたサービス提供事業と同時に提供する物品の輸入販売、及び③外国投資家による出資割合が51%未満で、店舗を持たずに輸入販売業務を行う場合には、貿易ライセンスの取得は必要ないとされている。
  4. ・ 現行の規制に基づいてすでに輸入販売業務を行っている外資企業については、新政令の施行後も、現行の規制に従って輸入販売業務を行うことができる。但し、当該外資企業が希望する場合には、新政令に基づいて貿易ライセンスを取得し、新政令の規制に従って事業活動を行うことも可能になる。

 以上が、新政令案において想定されている、現行の規制からの重要な変更点である。期限付きの新たな貿易ライセンスが必要となる点では規制が強化されるようにも思える一方、HSコードによる特定が不要になれば、事業活動の柔軟性は高まるため、歓迎すべき規制緩和にも思える。

 なお、ベトナムにおいては一度省庁から法令の案が提出された後、政府内での調整や各国商工会の意見を受けてその内容が大幅に変更されることや、調整に時間を要して最終案が発表されるまで数年を要する場合も多々あるため、最終的に公布・施行されることになる新政令がどのような内容になるか、今後注目していく必要がある。また、輸入販売業務を行う外資企業の設立手続きについては、法律上の規定と実務との乖離が多く見受けられるため、設立を検討される際には、専門家への相談が必要である。

 

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