経産省、「アンチダンピング措置の共同申請に向けた検討のモデルケース」を
ウェブ公開
――公取委は研究会会合において「独占禁止法上の考え方」を示す――
経済産業省は10月26日、「アンチダンピング措置の共同申請に向けた検討のモデルケース」を同省ウェブサイトで公開した。
複数の事業者・事業者団体によるアンチダンピング(AD)措置の共同申請または団体申請に当たっては「申請に向けた意思決定のための事業者間の調整に係るコストや、申請に当たって必要な価格や収益に関する情報交換に係るコンプライアンス上の懸念といった課題」があり、申請を検討する国内事業者や事業者団体からは、このような課題が申請への萎縮効果をもたらしているとの指摘がなされてきたとされる。
経産省では「アンチダンピング措置の共同申請及び団体申請の活用促進に関する研究会」(座長:川瀬剛志上智大学法学部教授)を設置し(事務局は貿易経済協力局貿易管理部特殊関税等調査室)、通商法・競争法の学識経験者やAD申請代理人経験のある弁護士からなる計7名の委員により本年8月26日・9月30日と2度の会合を開催。第2回会合では、公正取引委員会から「『アンチダンピング措置の共同申請』における独占禁止法上の考え方について」の説明も聴取した。議論を踏まえ、今般、本モデルケースを作成・公表したものである。
本モデルケースは「過去のADの共同申請や団体申請において申請者から寄せられた申請の検討段階での課題から作成した仮想事例について、実務での対応例や有識者の意見を基に解決例と考え方を整理」したもので、全8ページ建て。まず「モデルケースの条件設定」として、国内生産者の総生産高に対する生産高が20%である自社製品Xを擁する事業会社Aが製品Xを生産する他の事業会社B(生産高25%)・C(生産高45%)と共同でAD申請を行う検討を進める事案が掲げられる。製品Xと競合するP国産品が「ここ数年にわたり極めて安値で大量に輸入されており、それを引き合いにした失注や製品価格の引下げといった事例が多発していることに着目し、その状況を打開するため」の策となる。
この条件設定に対し、本モデルケースでは「ハードル1.同業他社との接触が認められない」「ハードル2.申請コストに対する各社のスタンスが揃わない」「ハードル3.業界団体によるAD申請の呼び掛けができない」といった各ハードルを設けたうえで、たとえば「ハードル1」では、事業会社Aの経営企画部および法務部が「一般的な情報であったとしても、同業他社と情報を共有することは、独占禁止法に抵触する(競争の実質的制限につながる)おそれがある」と判断したことから、A社営業部によるB社・C社との接触を認めなかったとする。
このような仮想事例に対し、本モデルケースは「AD共同申請についての初期段階の検討は、同業他社間においてどのように進めればよいか」を論点として抽出。同業他社との具体的な相談に当たって留意すべき事項を紹介しながら「解決例」を示すほか、「解説」を加えることにより深い理解が得られる構成とした。本事例に係る「解説」では、冒頭に上記・公取委「独占禁止法上の考え方」を次のように用いながら、丁寧に説明を進めている。「法令に基づいてAD措置の共同申請を行うこと自体は、直ちに独占禁止法上問題となるものではありません(公正取引委員会「アンチダンピング措置の共同申請における独占禁止法上の考え方」9頁参照)。」
AD措置に関し、経産省では他に①不当廉売関税(アンチダンピング関税)を課することを求める書面の作成の手引き(財務省・経済産業省)、②アンチダンピング(AD)措置の効果と活用(特殊関税等調査室)、③貿易救済措置(モデル申請書)といった各種資料を用意するとともに、「不公正な安値輸入でお困りの方はお気軽にご相談ください」と特殊関税等調査室を相談窓口として案内しており、適宜参考とされたい。