◇SH1931◇債権法改正後の民法の未来33 契約締結過程の情報提供義務(1) 阪上武仁(2018/06/27)

未分類

債権法改正後の民法の未来 33
契約締結過程の情報提供義務(1)

北浜南法律事務所

弁護士 阪 上 武 仁

 

1 最終の提案内容

  1. 「第1 契約交渉段階(情報提供義務)
     契約交渉段階における情報提供義務に関する規定を設けることの当否、規定の内容について、どのように考えるか。契約交渉段階における一般的な情報提供義務に関する規定とは別に、それを知らなければ生命、身体等に損害を生じさせる可能性が高い情報を対象として情報提供義務を規定するという考え方があるが、このような考え方についてどのように考えるか。」[1]

 

CF 中間試案

  1. 「2 契約締結過程における情報提供義務
     契約の当事者の一方がある情報を契約締結前に知らずに当該契約を締結したために損害を受けた場合であっても,相手方は,その損害を賠償する責任を負わないものとする。ただし,次のいずれにも該当する場合には,相手方は,その損害を賠償しなければならないものとする。
  2.   (1) 相手方が当該情報を契約締結前に知り,又は知ることができたこと。
  3.   (2) その当事者の一方が当該情報を契約締結前に知っていれば当該契約を締結せず,又はその内容では当該契約を締結しなかったと認められ,かつ,それを相手方が知ることができたこと。
  4.   (3) 契約の性質,当事者の知識及び経験,契約を締結する目的,契約交渉の経緯その他当該契約に関する一切の事情に照らし,その当事者の一方が自ら当該情報を入手することを期待することができないこと。
  5.   (4) その内容で当該契約を締結したことによって生ずる不利益をその当事者の一方に負担させることが,上記(3)の事情に照らして相当でないこと
  6.   (注) このような規定を設けないという考え方がある。」[2]

 

2 提案の背景

 現代社会においては、契約締結過程において、当事者間に情報収集能力、情報処理能力等に格差が存在することが少なくない。そこで、契約締結のための意思決定の基盤の確保という観点から、契約を締結するか否かの判断に影響を与える事項についての情報提供義務、およびそれ以外の事項について情報提供義務を規定する観点から、判例上、肯定されている契約締結過程における信義則上の情報提供義務、および同義務違反の効果としての損害賠償責任が肯定されていることから、これらのルールを明文化するために提案されたものである[3]

 

3 議論の経過

(1) 経過一覧

 本論点についての議論の経過は、下記一覧表のとおりである。

会議 開催日等 資料等
第9回 H22.5.18 部会資料11
第22回 H23.1.25 部会資料22「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理のたたき台(2)
中間的な論点整理 H23.4.12決定 中間的な論点整理案
第49回 H24.6.12 部会資料41
第3分科会第5回 H24.9.25 分科会資料6、中井康之委員「契約に関する基本原則等」
第67回 H25.1.22 部会資料56「民法(債権関係)の改正に関する中間試案のたたき台(4)(概要付き)」、大阪弁護士会民法改正問題特別委員会 有志「部会資料56(中間試案のたたき台(4))第6の2 に対する意見」
中間試案 H25.2.26決定 民法(債権関係)の改正に関する中間試案
第84回 H26.2.25 部会資料75B、大阪弁護士会有志案「部会資料75に対する提案」

 


[1] 部会資料75Bの1頁

[2] 中間試案

[3] 第9回会議議事録24頁菱川関係官

 

タイトルとURLをコピーしました