◇SH3427◇インドネシア:オムニバス法の制定(3)〜投資及び事業環境の改善(2) 中村洸介(2020/12/22)

未分類

インドネシア:オムニバス法の制定(3)
〜投資及び事業環境の改善(2)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 中 村 洸 介

 

 本稿では、前稿に引き続き、オムニバス法第3章「投資及び事業環境の改善」に規定されている、①許認可手続きの主要な変更点と②新たな投資規制について概説する。

 

新たな投資規制

 オムニバス法は、投資法を改正し、中央政府に独占される業種及び投資が禁止される業種を除く全ての事業分野について、投資のために開放される旨規定する。

 

1. 中央政府の独占業種

 主要な兵器設備システムや航空、航海のナビゲーション等、防衛や安全保障に関連する活動等に係る業種については、中央政府の独占業種とされ、投資は認められない。

 

2. 投資禁止業種

 オムニバス法は、内資・外資を問わず投資を禁止する業種として、以下の6つの業種を定める。

 ① 麻薬の栽培及び製造
 ② 賭博及びカジノ
 ③ ワシントン条約附属書I記載の魚種の捕獲
 ④ サンゴの利用又は採取を伴う活動
 ⑤ 化学兵器製造
 ⑥ 工業化学物質及びオゾン破壊物質の製造

 

3.  プライオリティリスト

 上記1又は2に該当しない事業分野については、投資のために開放されるが、以下のとおり、全て外資による100%出資が認められるものではないことに注意を要する。

 これまでは、投資法に基づく大統領令においていわゆるネガティブリストが定められ、外国資本による投資が禁止される事業や投資可能な場合の出資比率その他の制限がKBLIごとに規定されていた。オムニバス法により、ネガティブリストは廃止されるが、その施行規則として現在策定中である大統領令において、新たにプライオリティリストが定められる。

 BKPMによれば、プライオリティリストには、以下の(1)優先事業分野と(2)アレンジメント付き事業分野(Business Fields with Arrangements)が規定される。

 

  1. (1)優先事業分野
  2.    246の事業分野に対して、タックスホリデー、許認可の簡素化、インフラ整備等の税制又は非税制上の優遇措置が与えられる。優先事業分野には、輸入代替又は輸出志向型、資本集約型、労働集約型、ハイテクノロジーの事業が含まれるが、具体的な業種は現時点では不明である。
  3.  
  4. (2)アレンジメント付き事業分野
  5.    プライオリティリストには、①内資のみに認められる19の事業分野、 ②外資制限が課せられる36の事業分野、及び、③一定のアレンジメントが必要となる26の事業分野が定められる。一方で、これらに含まれない事業分野については、条件なく投資が可能となる。
  6.    ①②③に該当する事業分野はオムニバス法からは明らかでない。また、BKPMによれば、外資規制の態様は、例えば「外資上限●%」というようにネガティブリストに類似するようである。ネガティブリストよりも制限的にならないとのことであるが、プライオリティリストへの転換によってどの程度外資規制が緩和されるかについては、今後3か月以内に制定される施行規則で詳細規定されることになる。
  7.  
  8. (3)既存の企業への影響
  9.    プライオリティリストを定める大統領令が制定されるまでは、ネガティブリストに基づく規制が維持される。また、BKPMによれば、既存の投資に対しては、プライオリティリストの適用対象外とするグランドファーザー条項が適用され、仮にプライオリティリストによって現在よりも投資規制が厳しくなったとしても、既存の許認可は有効に維持される。

 

4. 外国資本企業の最低投資金額について

 外国投資家が出資する企業(外国資本企業)については、BKPM規則に基づき、原則として、KBLIごとかつ事業地ごとに最低投資金額として100億ルピア超(土地及び建物を除く)が設定され、そのうち最低25億ルピアは資本金として払い込まれることが義務付けられている。オムニバス法においてもこの点は変更されていない。

 


この他のアジア法務情報はこちらから

 

(なかむら・こうすけ)

2011年早稲田大学大学院法務研究科修了。2012年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2019年Columbia Law School卒業(LL.M.)。2019年~長島・大野・常松法律事務所ジャカルタ・デスク勤務。

2012年に長島・大野・常松法律事務所に入所し、M&A案件を中心に国内外の企業法務全般に従事。現在は、日本企業によるインドネシアへの事業進出や資本投資、その他現地での企業活動全般についてアドバイスを行っている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。

当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ及び上海にオフィスを構えるほか、ジャカルタに現地デスクを設け、北京にも弁護士を派遣しています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

詳しくは、こちらをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました